世界中で感染の拡大が伝えられる新型コロナウィルス、COVID-19。米国でも2月26日現在、国内の感染者が56人に達した。米ではニューヨークの地下鉄で黒人男性がマスクをしたアジア系の女性に暴行を働く事件が起きたが、各地でこうしたアジア系に対するヘイトクライムの増加が問題になっている。
米国内の感染者数が最も多いのがカリフォルニア州で、10人に達した。しかもこれまでの感染者はクルーズ船、中国からの帰国者など感染源が明らかだったが、最新のカリフォルニアのり患者は米国初の感染源不明とされている。このためサンフランシスコ、シリコンバレーの中心地でもあるサンタクララなどが非常事態を宣言、感染拡大を最小限にとどめる努力を行う、としている。
ロサンゼルスでは現在のところ感染が確認されたのは1人だが、クルーズ船からの帰国者がロサンゼルス近郊の空軍基地に隔離されていることもあり、市民の間に不安が広がっている。カリフォルニアは米国でも最大のアジア系コミュニティが存在する地域でもあり、アジア系への差別的発言、暴力などが増加している。
たとえばロサンゼルス郡のサンフェルナンドバレーでは、アジア系の児童が同級生からのいじめにあい、殴られたりした結果病院でMRI検査を受けたことが報告されている。また感染者の報告がないにもかかわらず、アジア系住民の多いアルハンブラ地区では児童の親らが学校の閉鎖を求める署名運動を行い、1万4000もの署名が集まった。さらに、カーソン地区ではWHOを騙るチラシが配られたが、そこには「パンダ・エクスプレスなど、アジア系のレストランを避けるように」と書かれていたという。
このためロサンゼルス郡では郡のスーパーバイザーが「我々はあらゆるヘイトクライムに対して立ち向かう」と異例の声明を出した。特に米CDC(疾病予防センター)が「米国内でも市中感染が広がる可能性がある」と発表したことで、市民の間に不安が広がっているのもヘイトクライムの増加に拍車をかけると予想されている。