中国 覇権への躓き

2020年2月27日

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内藤二郎 (ないとう・じろう)

大東文化大学経済学部教授

1965年神戸市生まれ。89年同志社大学経済学部卒、2002年神戸商科大学(現兵庫県立大学)大学院経済学研究科博士後期課程修了・博士(経済学)。大東文化大学経済学部助教授などを経て10年より現職。

 2020年は二つの意味で中国指導部にとって重要な年だ。第一に、国民の生活水準と質を高め、貧困人口をゼロとし、環境の質を全体として改善する「全面的小康社会」の実現の年である。具体的には、国内総生産(GDP)および国民の平均年収を10年から倍増するという目標を達成できるかが問われることになる。

 第二に、20年までの年平均のGDP成長率を6・5%以上に設定するなど、全面的小康社会を実現するために定められた第13次5カ年計画(16年から20年)の最終年である。そして、21年には、中国共産党建党100年を迎える。

 しかし、中国国家統計局が1月に発表した19年のGDP成長率は、18年から0.5ポイント減速した6.1%だった。工業生産の伸び率も6.2%から5.7%に下がり、経済成長は鈍化している。国内には構造改革の遅れや需要縮小などの問題を抱え、また長引く米中摩擦の影響もあり、経済情勢は厳しさを増している。さらに、新型コロナウイルスによる肺炎の発生・拡大により、経済が一層大きく落ち込むことが懸念される。

 全面的小康社会を実現するには、20年も19年並みの成長を維持しなければならない。そのため中国政府は、景気対策の施策を次々と打ち続けている。19年の第1四半期から第3四半期に約1兆8000億元(約28兆円)規模の減税・費用削減が実施された。また11月には、中央政府から地方政府に対してインフラ整備目的の特別債券(専項債)1兆元の追加発行が指示された。しかし、こうした景気対策は、年々厳しさを増していく中国財政の構造改革を先のばしにすることにもなる。

 中国の財政赤字は年々拡大している。中央・地方政府の債務残高は、14年には約25兆元だったが、18年には約33兆4000億元に拡大した。そのうち約18兆4000億元を地方政府の債務が占め、さらにそれが19年末には約21兆3000億元に達した。そのうち一般債権が約11兆9000億元、専項債(特別地方債)が約9兆4000億元を占める。

 これに加えて、地方政府においては「隠れ債務」問題も深刻である。「隠れ債務」とは、15年以降認められた地方債の発行ではなく、本来認められていない形態の地方政府の債務のことを指す。例えば、地方政府傘下の投資会社である融資プラットフォームが政府保証をもって資金を貸し出す。または、官民連携事業を活用した地方の投資プロジェクトにおいて、地方政府が債務保証して、参加する民営企業が金融機関から資金を調達することなどがこれにあたる。

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