トランプ政権下で逆行してきた環境保護法
改めて説明する間でもないことだが、ドナルド・トランプ大統領が所属する共和党は、経済の発展とそれを支える大企業の優遇政策を最優先事項にしてきた。その一方で民主党は、「不都合な真実」のドキュメンタリー映画を製作したアル・ゴア元副大統領が良い例であるように、環境保護と自然との共存を理想に掲げてきた。
少々乱暴にわかりやすく言うなら、強くて豊かでこそアメリカ、と目先の利益を常に優先させる共和党。ある程度富を分配させ、長期的なSustainability、要するに使い捨てではない共存社会を目指すのが民主党である。
もちろん込み入った政治の世界には、白黒ではっきり割り切れないグレイの部分はたくさんある。「オバマ政権時代にこんな環境破壊が起きている」というような、細かいご指摘は勘弁していただきたい。どこの政権でも、常に100%理想の政治を実施できるわけではない。
だが現在のトランプ大統領は、「地球温暖化」を真っ向から否定するアンチ環境保護派を自ら公言しており、パリ協定から脱退するなど取り組みは極端だ。彼が大統領に就任してから、水質、そして大気汚染の基準を取り締まる環境保護法が次々と解体され、緩められてきた。ニューヨークタイムズ紙によると、トランプ大統領がキャンセルさせてきた環境保護法は95件にも及ぶという。
トランプ政権に立ち向かうリベラル州
さてご想像通り、今回のニューヨーク州のビニール袋配布禁止令を出したクオモ州知事は、民主党だ。弁護士の資格を持ち、元ニューヨーク州司法長官でもある彼は、クリントン政権下でアメリカ合衆国住宅都市開発長官を務めたこともある筋金入りの民主党なのである。
このクオモ知事のリーダーシップに加え、2018年11月のニューヨーク州議会の上院選挙で民主党が8議席を取り戻し、この法案が無事に可決されたのだ。(現在は63席中40席が民主党が占めている)
良く言われるようにアメリカ合衆国は実際には合州国であり、それぞれの州政府が独立国に近いほどの自治権を有している。日本では県ごとに法律が違うなどあり得ないが、アメリカでは飲酒年齢や運転免許獲得の年齢など、州法で定められていることは少なくない。
ニューヨーク州では、昨年12月に不法滞在中の移民でも合法的に運転免許獲得ができるという、不法移民を狙い撃ちにするトランプ政権の神経を逆なでするような法案を成立させたばかり。(もっとも4年前にこの法案を可決したコネチカット州では、それによって無免許のひき逃げ事件が減っているという統計が出ている)
3月からいよいよ施行されるニューヨーク州のビニール袋禁止法は、トランプ政権のアンチ環境保護ポリシーにささやかながらも一石を投じることになるだろう。カリフォルニアとニューヨークという二大経済大州がこの法を取り入れたことが、アメリカの残りの州にどう影響を与えるのかが注目される。