Washington Files

2019年12月2日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 トランプ政権が先月4日、気候変動への国際的取り決め「パリ協定」からの離脱を国連に正式通告したことを受け、地球温暖化対策への真剣な取り組みを支持してきた米産業界が困惑と反発の度を深めている。

 米国ではこれまで、環境保護団体、関連学会、市民組織はもちろん、経済界でも多くの企業が地球温暖化対策の推進を支持してきた。2017年6月1日、トランプ大統領が「パリ協定離脱」方針を表明した際には、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ウォルマート、アップルなど大手企業25社の最高経営責任者(CEO)が連名で大統領あてに書簡を送り、「パリ協定は新規クリーン・エネルギー技術市場を拡大させ、多くの雇用創出と経済成長を促す原動力になる」として、協定残留を訴えてきた。署名者の中には、自動車メーカーGM、石油業界大手エクソン社長らも含まれた。

石炭労働者をホワイトハウスに招いたこともあるトランプ大統領(REUTERS/AFLO)

 今回のトランプ政権の協定離脱正式通告は、こうした動きに真っ向から冷水を浴びせるかたちとなった。

 この中でとくに反発を強めたのが、全米最大規模の「We Are Still In(https://www.wearestillin.com/)」(私たちは踏みとどまる)と呼ばれるユニークな協定支援組織だ。

 ホームページによると、同組織は2年前、トランプ大統領による離脱方針表明を受け全米各地の企業、投資家、市長、州知事、大学学長らがウェブサイトを通じて呼びかけ結成されたもので、その規模はまたたく間に各地に広がり、今日では125都市、9州、902企業および投資会社、183大学を網羅、人口にして1億2000万人、経済規模も6兆2000億ドルに相当する巨大連合組織となった。

 「We Are Still In」は、ポンペオ国務長官が協定離脱正式通告を発表した去る11月4日、その日のうちにツイッターを通じ「トランプ大統領は脱退を表明した。だが、私たちアメリカ国民――すなわち多くの都市、州、企業、大学そして地域コミュニティはいぜん協定に踏みとどまる」「私たちの組織参加者はアメリカ経済生産全体および全人口の半分を代表するものであり、パリ協定残留に対する圧倒的支持は国民幅広い層に広がっている」などと訴えた。

 これを受け、宝石店「ティファニー」など多くの装飾、ファッション業界からも「私たちも座視してはいられない。連帯して気候変動との戦いの国際連帯を強めたい」といった賛同リツイートがあいついだ。

 また、パタゴニア、スノーピーク、コールマンなど全米のアウトドア・グッズ・メーカー1300社から成る「アウトドア工業協会」(本部コロラド州ボールダー)も同日、緊急声明を発表「気候変動はわが地球、人類、社会に深刻な影響を及ぼしており、当協会のメンバー企業はそれが、森林、河川、丘陵地帯など自然環境にダメージを与えつつあることを肌で熟知している。本日、トランプ政権が正式にパリ協定離脱を発表したことは、米国民のアウトドア・リクリエーションと業界に対し災害disasterをもたらす処方箋にほかならない」と強く非難した。

 ではトランプ政権はなぜ、このような圧倒的な世間の反対にもかかわらず、パリ協定からの離脱に踏み切らざるを得なくなったのか?

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