Washington Files

2019年11月11日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 来年11月の米大統領選に向け、米国内でSNSによる政治広告掲載の是非問題が波紋を広げている。大手業者間でも、「表現の自由」か虚偽広告規制かをめぐり、大論争に発展してきた。

 きっかけとなったのは、去る10月30日、ツイッター社のジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)が、自らのツイッターで「弊社は今後、グローバルにすべての政治広告の掲載を停止する」と突然発表したことだった。

ジャック・ドーシーCEO

 ドーシー氏はこの大胆な決定理由について、

  1. 投稿への閲覧者獲得は自らの努力によるべきであって金で買うべきものではない。
  2. インターネット広告は広告主にとって信じがたいほどパワフルで大きな効果をもたらす一方、政治面に顕著なリスクをもたらし何百万人もの有権者の投票に影響を与える目的のために悪用される。
  3. インターネット政治広告は機械学習をベースとしたメッセージおよびターゲットしぼりこみmicrotargetingの最大利用や、未検証の誤った情報そしてディープ・フェイクを超スピードで巧妙に圧倒的規模で氾濫させ、市民社会への新たな挑戦となる。
  4. (新方針は)表現の自由問題とはかかわりなく、ユーザーへのアクセスのための金銭支払いに関するものであり、金銭によって特定の政治的スピーチに対するアクセス拡大を図ることは民主主義体制の根幹にかかわる問題だ―などと説明した。

 ツイッター社はかねてから、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の急速な普及により、国境を越え多くの一般市民が気楽に会話の場に参加できるようになった半面、その社会的影響力を悪用した反社会的組織、人種差別主義団体などが激増しつつあることを懸念、ここ数年間だけでも、テロ活動を教唆したり、白人至上主義者の運動を扇動するツイッター・アカウント数十万件を特定、凍結したりしてきた。

 また米議会では、とくに大統領選の有力候補バーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン両上院議員ら民主党議員の間から、右翼団体や共和党保守派組織による事実に反する非難・中傷広告が激増しつつある現状を踏まえ、SNS関係各社に対策を講じるよう求める声が高まってきていた。

 今回のツイッター社の措置は、来年11月の大統領選に向けて、さらにこのような有権者かく乱を目的とした虚偽の政治広告が氾濫し、社会を混乱しかねないとして事前に予防線を張ったものだ。

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