Washington Files

2019年11月25日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 米大統領のウクライナ疑惑をめぐる下院公聴会は21日でいったん終了した。トランプ政権にとって極めて不利な政府関係者の重要証言があいついだ結果、共和党陣営は、今後は不可避と判断、早くも上院での「弾劾裁判」に臨む作戦についてホワイトハウス側と検討に入った。

 下院情報活動委員会(アダム・シフ委員長)は過去2週間に及んだ公聴会を通じ、アレキサンダー・ビンドマン国家安全保障会議(NSC)ウクライナ担当デスク、ジェニファー・ウイリアムズ米副大統領付き安全保障担当スタッフ、ティム・モリソンNSCロシア欧州地域担当部長、カート・ボルカー前駐ウクライナ特別代表、マーシャ・イバノビッチ前駐ウクライナ大使、デービッド・ヘイル国務次官(政務担当)、ビル・テイラー駐ウクライナ代理大使、ゴードン・ソンドランド駐EU大使、デイビッド・ホルムズ駐ウクライナ大使館参事官ら、ウクライナ問題処理に直接関わった当事者から詳細にわたる重要証言を得た。

(AP/AFLO)

 そして以下のような具体的な証言を通じ、大統領がウクライナ側に対し、軍事援助再開の「見返りquid pro quo」としてジョー・バイデン民主党大統領候補の捜査を要求したことを明白に裏付ける全体像が浮き彫りになった:

 「今年7月25日、トランプ大統領がウクライナのゼリンスキー大統領と行った電話会談の一部始終をホワイトハウス担当官として傍聴したが、その会談の中でトランプ大統領が米国内政治の政敵に対する捜査を外国指導者に直接依頼したことに驚くと同時に、米国国家安全保障を損なう行為だと確信した」(ビンドマン氏)

 「同じ電話会談を傍聴し、ペンス副大統領にただちに報告したが、副大統領は聞き流すだけで、この問題についての新たな指示など受けなかった」(ウイリアムズ女史)

 「トランプ大統領は、バイデン捜査案件を含め、ウクライナ問題処理をジュリアーニ顧問弁護士に任せて以来、同氏はNSC、国務省、国防総省の公式ルーとは異なるメッセージを大統領に送り続けた。このため、対ウクライナ外交には相対立する二つのチャンネルが出来上がり、米国の国家利益を損なうことになった」(ボルカー氏)

 「7月25日の電話会談に先立つ同月10日、ホワイトハウスで国家安全保障会議終了後、地下にあるWard Roomと呼ばれる別室で、ソンドランド大使らとともにウクライナ政府側の大統領顧問、国家安全保障大臣と密談し、ゼリンスキー大統領のホワイトハウス訪問、バイデン捜査問題などを話し合った」(ボルカー氏)

 「トランプ大統領がわれわれの関知しないところで対ウクライナ軍事援助凍結を命令したことを知り、アメリカの国益に反するとしてポンペオ国務長官にも反対の意向を伝えたが、長官はそのまま大統領の指示に従った」(ヘイル氏)

 「米政府がウクライナに対する軍事援助凍結を決定したことについて、ウクライナ政府側は7月25日電話会談の数日前にすでに情報を入手しており、同国の政府当局者から電話会談の当日にも数回にわたり、援助凍結の真意についてメールで問い合わせがあった。その時点で、援助凍結がホワイトハウス予算管理局(OMB)で決定されていたことを初めて知らされ、驚いた」(クーパー女史)

 「電話会談翌日の7月26日、ウクライナの首都キエフのレストランでソンドランド大使とワインを飲みながら昼食を共にした際、大使がトランプ大統領に直接電話を入れ、そのやりとりを傍で聞いた。その中で大統領はバイデン捜査の件について大声で尋ねたのに対し、『ゼリンスキー大統領はバイデン捜査をやると言っています』とはっきり応じた」(ホルムズ氏)

 「私は、ウクライナ側からのバイデン捜査開始の確約とりつけと軍事援助問題について、トランプ大統領とこれまで10回程度、直接電話で話し合ってきた。これが『quid pro quo』であったかと言えば、まさにその通りだ。この取り決めは『大統領の直接指示』に基づいたもので、2+2=4と同様に明白だ。この件については、ペンス副大統領、ポンペオ国務長官、マルバニー大統領首席補佐官代行、ボルトン大統領国家安全保障補佐官(解任)らみんなが同じ輪の中にいた」(ソンドランド氏)

 ウクライナ疑惑についてはこれまで共和党陣営は、①対ウクライナ軍事援助ついては、その後再開されたのだから「見返り」容疑は成立しない②民主党側が秘密聴聞会で喚問した証言者たちの話は間接情報であり信用に値しない―などと反論してきた。

 しかし、今回の公聴会では、ウクライナ問題処理に直接関係した当事者たちが現職を含め、具体例を列挙して「見返り」が存在したことを裏付ける証言を次々に行い、共和党側のこれまでの主張を根本から覆すかたちとなった。

関連記事

新着記事

»もっと見る