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Washington Files

2019年11月25日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 さらに公聴会最終日の21日、今年7月までNSCの欧州ロシア部長としてロシアおよびウクライナ関係の政策立案に直接携わったフィオナ・ヒル女史が証言台に立ち、①2016年米大統領選挙にウクライナが介入したとの説が米議会の一部(共和党議員たち)で流布されたが、完全なフィクションに過ぎず、本格的に介入したのはウクライナではなくロシアだった②トランプ政権が対ウクライナ軍事援助を凍結したのはウクライナの腐敗政治を正すためだったという主張も事実に反しており、実際はウクライナによるバイデン関連捜査を促すためだった―などと理路整然と明言した。

 共和党側はこれまで、ウクライナ側に捜査依頼したのは、同国による2016年米大統領選挙への介入実態解明が目的だったこと、さらに軍事援助を凍結したのは、同国の腐敗政治を正す意味があったこと、などと説明してきた。しかし、ヒル女史の指摘はこうした言い分を完全否定した。

 このため同日の公聴会では、共和党出席議員たちはさらに反論するすべもなく、気まずい立場に置かれ、何人かの同党議員はヒル女史の証言途中で退席してしまうハプニングまであった。

 米下院はこのあと11月23日からいったん「サンクスギビング(感謝祭)休会」に入り、同月28日に審議が再開される。

 この間、ウクライナ疑惑問題については、これまでの秘密聴聞会および公聴会証言内容などを踏まえ、司法委員会事務局で今後の弾劾の進め方など具体的な詰めの作業が行われる。その後、同委員会での「弾劾訴追勧告」を受け、12月クリスマス休暇入りまでには下院本会議で、トランプ大統領を正式に弾劾するかどうかの採決が行われるとみられている。

 「弾劾訴追」には下院議員(435人)の過半数支持が必要とされるが、民主党所属議員233人のほぼ全員が支持投票するとみられており、同大統領は現職として史上3人目の弾劾を受けることになる。

上院での弾劾裁判への対策協議開始

 一方、共和党陣営は早くも、下院本会議でのトランプ大統領弾劾訴追は確実とみて、来年早々にも開廷が予想される上院での弾劾裁判への対策協議を開始した。

 ワシントン・ポスト紙によると、公聴会が終了した21日午後、リンゼイ・グラハム、テッド・クルーズ各氏ら共和党有力議員グループがホワイトハウスに出向き、トランプ政権高官らと弾劾裁判の対応策について“私的協議”を行った。ホワイトハウス側はミック・マルバニー首席補佐官代行、パット・チポローネ法律担当顧問、ジャレッド・クシュナー上級顧問、ケラヤン・コンウェー顧問ら最高幹部が出席した。

 席上、弾劾裁判について①共和党が多数を占める上院本会議で「弾劾不当」を理由に訴追を棄却する②憲法規定に沿って開廷するが裁判審議は「2週間程度」にとどめる③できるだけ時間をかけてでもTV中継される審議を通じ、民主党側の訴追の不当性を国民向けにアピールする―など、あらゆるシナリオについて意見交換された。

 これらの中で、裁判審議が長引けば長引くほど、2020年11月の大統領選および議会選挙にマイナス・イメージが広がるとして、年明けの「1月中、2週間程度」で共和党が多数を占める上院裁判での無罪判決にこぎつける案を支持する声がめだったという。

 いずれにせよ、今回のトランプ弾劾問題をめぐっては、民主党側も下院訴追後、上院での弾劾裁判で「無罪判決」となることはすでに十分織り込み済みだ。

 従って今後の米国民の関心事は、トランプ大統領罷免かどうかではなく、弾劾裁判での攻防を通じ、来年11月大統領選挙に向けて、与野党どちらが有権者の支持をいかに取り付けられるかに注がれてきたといえよう。

  
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