1907年の対ドイツの英仏露三国協商も、ドイツという言葉は一言も使っていません。英ロ間、英仏間の緊張要因を取り除いた結果として、ドイツとの関係が唯一の緊張要因になったという体裁になっています。
また、麻生氏の「自由と繁栄の弧」や、クリントンの「アジア復帰」にしても、中国包囲網に類する言葉は一切使っていません。しかし、言わんとすることは、中国の脅威に備えるということです。また、少なくとも戦略家、あるいは防衛計画立案者なら、当然、中国を念頭に置くべきでしょう。そうでないと、この論文も言っているように、具体的な軍事戦略は出てこないことになります。
なお、論説で南西諸島の戦略的重要性が指摘されていますが、これは、2010年の防衛大綱以来の日本の問題意識とも一致します。今回の日米首脳会談の趣旨に沿って、今後とも、日米共同の南西諸島防衛体制を推進するべきでしょう。
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