EUのEV化推進政策
欧州主要国では、EVへのシフトを進めるため、様々な支援策が導入されている。例えば、スウェーデンではCO2排出量ゼロの電池稼働EV(BEV)/燃料電池車(FCV)からCO2排出量60g/kmのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)まで、排出量に応じ、約5700ユーロから1000ユーロの購入補助金が出されている。さらに、CO2排出量95g/km以上の車には自動車保有税が高くなる制度がある。例えば、スウェーデンで最も売れているCO2排出量152g/kmのボルボの大型SUVには最初の3年間約720ユーロ/年が加算され、その後も毎年300ユーロが加算される。
このEV/FCV導入支援策をさらに強化する制度変更が行われている。EV購入時に4000ユーロの補助金を出していた独連邦政府は、1月から補助金額を6000ユーロに引き上げた。さらに地方政府が上乗せして補助金を出すケースもある。
仏政府は、昨年末、制度を変更し補助金額を引き上げた。1km当たりのCO2排出量と車の価格により補助金額が異なるが、価格が4万5000ユーロまでのBEV/FCVであれば、6000ユーロ、4万5000から6万ユーロまでの価格帯のBEV/FCVには3000ユーロの補助金が出される。商用車は一律3000ユーロだ。今年の対象車両見込み台数は10万台、3億9500万ユーロの予算措置が行われている。
支援策が強化されているEU諸国では、EVの販売台数は大きく伸びている。一方、昨年6月に購入補助金額を減額した中国ではEV販売台数が大きく落ち込み、回復の兆しは全く見えない。
販売が低迷するテスラ
ノルウェーは販売台数の約半分がEVの国だが、昨年後半ドイツでのEV販売台数がノルウェーを上回るほど売れ始めた。EUでのBEV/PHEVの2019年の販売台数は56.4万台、前年比63%増だが、BEVが36.1万台、90%増、PHEVが20.3万台、31%増だ。全販売に占めるEVシェアは、2018年の2.2%から3.6%に伸びた。
ブランド別の販売台数は表-2の通りであり、テスラModel3が1位だった。しかし、今年に入りテスラの売れ行きに陰りが出ている。1月のEV販売実績は7万4663台、前年同期比121%増だった。EVは販売を伸ばしており、
一方、中国では昨年の補助金減額後の7月からEV車販売は低迷している。1月の販売は前年同期比約半分の5万1217台になった。全車種の販売も大きく低迷し22%減となっているが、EV車落ち込みは大きく、全体に占めるシェアは2019年の5.5%から3.2%に落ち込んでいる。そんな中で、テスラModel3は販売実績1位だが、台数は3183台に留まった。その内中国生産台数が8割以上を占めている。
2019年第4四半期のテスラの生産、販売実績は、それぞれ、10万4891台、11万2000台だった。うちModel3が、8万6958台と9万2550台を占める。1月のModel3の全世界販売台数は約1万台と言われており、販売が変調をきたしている可能性がある。その理由の一つは欧米メーカーがEVに力を入れだし、競争が激化していることだろう。
EVに力を入れ始めた欧米メーカー
EUでは運輸部門の脱炭素化には2030年に4400万台のEVが必要になり、そのため現在ある18.5万の充電設備を2030年に300万にする必要があるとのレポートがコンサルタントにより出されている。必要な投資額は200億ユーロだ。自動車大国ドイツではメルケル首相が、現在2万の充電設備を2030年までに100万にする計画を発表している。フォルクスワーゲンなど自国のメーカがEV製造に力を入れ出したからだ。メーカは、欧州委員会が設定した2021年の自動車のCO2排出目標達成には、EVを導入せざるを得ない。
独自動車工業会によると、今後3年間で業界のEVへの投資額は400億ユーロに達するとのことだ。フォルクスワーゲンは2029年までに75のEVモデルを投入し、累積2600万台のEVを販売する目標を明らかにしている。BMWはEV市場は年率30%で成長を続けると見ており、来年からSUVのEVを投入を始め2025年までに25モデルを投入するとしている。
米国勢も負けていない。3月上旬GMは2023年までに20モデルのEVを投入し、まず今年ハマーとキャデラックのSUVを投入する予定と発表した。22億ドルの投資を行いデトロイト郊外の工場をEV製造専門工場に改造することも発表している。フォードも負けていない。2022年までにEVに115億ドルの投資を行うと発表し、まず来年人気のある荷物用バンのEVを発売するとしている。
テスラの競争相手が次々と登場しているが、各社のEV製造には電池供給という弱点がある。今年2月アウディはe-Tron向けの韓国LG化学からの電池供給が間に合わず生産停止を余儀なくされたと報道された。同様の電池供給トラブルは英国ジャガー、韓国ヒュンダイも経験していると報道されている。