今年に入り急騰したテスラ株は、
テスラの高級車XあるいはSと競合する高級EV車をポルシェ、アウディ、メルセデスなどが相次いで投入していることに加え、世界最大の自動車メーカ・フォルクスワーゲンは、今後75のEVモデル投入を明らかにしており、量産車テスラModel3の競合相手になりそうだ。さらに、米国勢も新EV開発と巨額の資金投入を表明しており、販売競争はますます激化しそうだ。
テスラの将来に待ち受けるのは販売の激化だけではない。今後欧米でのEV生産の伸びが招く問題として、電池の供給能力があげられている。米国ではパナソニックと協力関係にあるテスラだが、中国工場向け電池供給は中韓メーカが担っている。ベルリン近郊に新工場を建設予定だが、この工場向けの電池供給も中韓に依存することになりそうだ。
EV生産が世界的に増える中で電池の手当ては大丈夫だろうか。今年2月ノルウェーのEV販売台数1位になり、欧州市場でテスラを上回る勢いがあったアウディは、2月電池が確保できず生産が中断したと報道されている。テスラの敵は自動車メーカだけではない、電池供給の奪い合いもありそうだ。欧米主要メーカがEVにシフトするなか、テスラはEV市場で勝ち残れるだろうか。
なぜEVシフトが進むのか
欧州主要国は、内燃機関自動車からEVへのシフトを加速するため内燃機関自動車の販売を今後禁止することを決定しているが、昨年12月フランス政府は2040年までに内燃機関自動車の販売を禁止する移動体ガイダンス法を成立させた。EVへのシフトを加速するため販売禁止を法で定めたのは、EUの中でもフランスが初めてとされている。
欧州各国がEVシフトを進めるのは温暖化対策のためだが、主要国の狙いは基幹産業の代表である自動車産業維持成長のため世界の流れに遅れないことだ。日本自動車工業会によると、日本の自動車の出荷額は60.7兆円、製造品出荷額の19%を占めている。輸出額は16兆円、輸出額に占める比率は20.5%。製造部門での雇用は88万人だが、関連部門、利用部門まで含めると546万人、全就業人口の8.2%を占める。
欧州でも自動車産業の重要性は変わらない。欧州自動車工業会によると製造の直接雇用は260万人、EUの全製造業雇用の8.5%を占める。間接雇用を含めると1380万人、EUの全雇用の6.1%を占めている。EU最大の自動車生産国ドイツの直接雇用は86.9万人、間接雇用は約300万人だ。主要国の雇用者数は表‐1‐Aの通りだ。
EU内での組み立て工場数は229、乗用車、商用車の生産台数は1921万台、国別の生産台数は表‐1‐Bの通りだ。日本への輸出台数は29万台、日本からの輸入台数は68万台だが、全輸出台数は606万台、輸入台数は420万台。輸出額は1380億ユーロ、輸入額460億ユーロ。欧州経済の屋台骨だ。