海野素央の Love Trumps Hate

2020年3月14日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

なぜバイデンは復活できたのか

バイデン集会に参加した電気業界の組合員(筆者撮影@中西部ミシガン州デトロイト)

 今回の民主党党員集会・予備選挙では資金力で劣り、ボランティアの運動員も足りないバイデン陣営が、全く逆のサンダース陣営を圧倒しています。これはとても不思議な現象です。その原因は一体どこにあるのでしょうか。

 まず、筆者がサウスカロライナ州及びミシガン州で観たバイデン陣営のテレビ広告は、「民主党」を強調していました。前で紹介したヴェロニカさんは語気を強めてこう語りました。

 「サンダースは民主党員ではないの。民主党に登録していなのよ」

 ヴェロニカさんのような民主党員にとって、バイデン陣営のテレビ広告は突き刺さるメッセージであることは間違いありません。

 12年米大統領選挙で南部バージニア州のオバマ選対の地域マネジャーを務めていたパーカーさんは、「民主党大統領候補はサンダース以外であれば誰でも構わない」と言うのです。その主たる理由は、サンダース候補が民主党に登録していない点でした。「民主党」を前面に出したバイデン候補のテレビ広告は、民主党員の心をつかんだことは確かです。

 次に、バイデン陣営が戸別訪問でアフリカ系の有権者を対象に、バラク・オバマ前大統領とバイデン候補の関係に訴えた点も看過できません。苦しい時の「オバマ頼み」です。

 しかも、サウスカロライナ州ではアフリカ系の票に影響力を持つジェームズ・クライバーン下院議員(同州・第6選挙区選出)の支持を勝ち得たことが、民主党予備選挙におけるゲームチェンジャー(試合の流れを変える出来事)になりました。 

労働組合の建物の一室にあったバイデン選対(筆者撮影@中西部オハイオ州コロンバス)

 さらに、組合の組織票が動きました。デトロイトで3月9日に開催されたバイデン候補の「投票に行こう(GOTV:Get Out The Vote)」の集会には、電気業界及び消防士などの労働組合員の参加が目立ちました。

 現在、筆者は中西部オハイオ州コロンバスに入り、現地調査を実施していますが、バイデン候補の選対はなんと労働組合の建物の一室にありました。ミシガン州と同様、オハイオ州においても労働組合の組織票が動く可能性が高いといえます。

中西部オハイオ州においても消防士の労働組合がバイデン候補を応援していた(筆者撮影@中西部オハイオ州コロンバス)

 もう1点挙げるとすれば、バイデン候補は民主党内の「融合」を演出することに成功した点でしょう。デトロイトでのGOTVの集会では、ライバルであったカマラ・ハリス元候補及びコリー・ブッカー元候補が応援に駆けつけ、バイデン候補に対する支持表明をしました。その結果、バイデン候補は「自分こそが民主党大統領候補に指名されるべき人物である」というメッセージを発信できました。

 ただ、バイデン候補は下を向いて原稿を棒読みする場面が多かったのに対して、ハリス・ブッカー両氏は有権者を鼓舞する演説を行いました。

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