From NY

2020年3月16日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

食料品の買い出しに走る人々

 3月11日にはトランプ大統領が、欧州からの渡航者を30日間禁止すると宣言。いよいよ緊急事態の緊迫感が高まりつつある。

 筆者が予定していた取材の出張もキャンセルになり、とりあえず自宅にこもるための食料を買い出しに近くのスーパーマーケットへと立ち寄った。

 平日の昼過ぎなので空いているだろうと思っていった自分の甘さを思い知った。現在は大手企業の多くが在宅勤務を奨励していて、昼間から大勢の人々がスーパーに買い出しに押し寄せてきていたのである。

ほとんどの商品が買われガラガラになった商品棚

 また食料品棚の在庫の薄さを見て、再び仰天した。パスタ、パスタソース、穀類など、保存のきくものの棚はガラガラである。人々はカートを山盛りにして買っていく。除菌ジェル(ハンドサニタイザー)は売り切れ。液体せっけん、ティッシュペーパー、トイレットペーパー類も、かなり在庫の種類が限られていた。

 その一方で、ビールなどの嗜好品、保存のきかない肉、魚介類、青果類などはそれほど影響がないようだった。レジは長蛇の列になっていたが、それでもこうして買い出しをする自分たちをジョークにしながら和気あいあいと並んでいるのは、どんなときでもユーモアのセンスを忘れないニューヨーカーの心意気だと思う。

 帰宅してから筆者がたまに利用する食料宅配サービスの状況を調べてみると、通常はオンラインオーダーの翌日に配達されるのに、現在ではおよそ3、4日待ちになっていた。

 これからどのような事態になるのか先が見えないままに、ニューヨーカーたちも自宅ごもりの準備を着々とはじめているのだ。

 ニューヨーカーは、比較的非常事態に強い。2001年の同時多発テロを生き延び、2012年にマンハッタンの半分が停電したハリケーン・サンディも経験してきた。それでも人々はどうにか助け合い、大きな暴動も起きずにやり過ごしてきた。この街の強さの理由の一つは、他民族が集まっているため、一つの価値観に囚われて暴走することがないことだと思う。

 だが今回の新型コロナウイルスの気持ち悪さは、いつ終結するのか見通しがまったくたたないこと。そして今後社会的にどのような状況が起きるのか、予測がつかないところだ。

 メトロポリタン美術館も、カーネギーホールもブロードウェイもないニューヨーク。レストランもバーもガラガラである。このシュールな現実は、一体いつまで続くのだろうか。

  
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