From NY

2020年3月16日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

 ついに来るべきものが来た。

 3月12日、ニューヨークのメトロポリタン美術館、自然史博物館、カーネギーホール、メトロポリタンオペラハウスなどの主要文化施設が、新型コロナウイルスの感染拡大防止を考慮して一時的に閉鎖することを発表した。

 その数時間後にはニューヨーク州のクオモ知事は、500人以上が集まるイベント禁止令を出し、ついにブロードウェイ劇場も全面的にシャットダウンという事態になった。一時的な処置ではあるが、これがいつまで続けられるのか現在のところ見通しはたっていない。

ニューヨークのスーパーには、大勢が家にこもるために買い出しに来ていた(筆者撮影、以下同)

最初の感染者は近郊に住む弁護士

 ニューヨークで最初の感染者が発覚したのは、わずか10日前の3月3日のことだった。

 感染者はマンハッタンで働く50歳の男性で、郊外のウェストチェスター郡にあるニューロシェルから、電車でおよそ1時間のグランドセントラル駅まで通勤していたという。ユダヤ系アメリカ人で弁護士だった彼はミッドタウンの法律事務所に勤務して、症状が現れる前にはユダヤ教寺院に礼拝に参列していたことなども発覚。本人の行動範囲の足取りをたどって、立ち寄った施設等の消毒、接した同僚などの検査が行われた。

 ニューヨーク州とニューヨーク市政府は最初から感染者の身元を明確にして、当初は実名こそ出さなかったものの、勤務先名と法律事務所の住所を公表。ニュースメディアを通して接触のあった可能性のある人々に注意を促し、感染者の子供たちが通っていた学校を一時閉鎖するなど、現実的で迅速な対応をとった。日本では考えられない対応だが、後に感染者とその家族はソーシャルメディアを通してサポートに対する感謝のメッセージを発信するなど、理不尽なバッシングなどの対象にはならなかったことが見て取れる。

ニューヨーク州と市の緊急事態宣言

 州内の感染者が89人に達した3月9日、アンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事は緊急事態を宣言。感染の拡大を防ぐことを州の最優先事項にして、必要な消毒剤の入手、人員の雇用などのプロセスをスピード化して対応にあたってきた。

 特に感染者が100人を超えたウェストチェスター郡、ニューロシェルの新型コロナウイルスを封じ込めるため、3月12日から3月25日までの2週間、ニューロシェルの半径1マイル以内にある学校、礼拝所、その他の大規模な集会施設を消毒するために閉鎖。また同地域を支援するために、州兵をニューロシェルの保健局の司令部に派遣し、食料を家に届け公共スペースの消毒を支援することなどの声明を発表した。

 加えて3月12日に、ニューヨークのビル・デブラシオ市長がニューヨーク市の緊急事態宣言を行い、レストランやバーに許される収容最大人数を通常の50%までに下げた。

 12日までにニューヨーク州内で判明した感染者は216人。そのうちニューヨーク市の感染者は95人と発表されている。おそらくこの数字は、氷山の一角にすぎないのだろう。

 州知事、市長ともに精いっぱいの対応をしていることは市民たちにも伝わってきて、行政に対する不満の声はほとんど聞こえてこない。

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