2022年8月8日(月)

サムライ弁護士の一刀両断

2020年3月16日

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河本秀介 (かわもと・しゅうすけ)

弁護士

敬和綜合法律事務所所属。東京大学卒業後、三菱重工業での勤務経験を経て、2007年に弁護士登録。以後、会社関係訴訟、企業経営への助言、株主総会指導、M&Aアドバイスなど、コーポレート分野を中心に、幅広い内容の業務を遂行している。

今回の規制は緊急時の措置

 それでは、マスクは今後もずっと転売が禁止されるのでしょうか。

 今回の措置は「国民生活安定緊急措置法」に基づく措置です。同法はもともと第一次オイルショックの際に制定された法律で、生活に密接に関連するような物資について価格が高騰するおそれがある場合に、価格安定のための緊急措置を講じることができるとする法律です。

 価格の高騰のおそれが収まった場合には、そのような措置は解除されるとされていますので、コロナ騒動が終息した後には、転売規制も解除されるのではないかと思われます。

高額転売業者にどう向き合うか

 今回、マスクの転売規制が実施されるにあたり、高額転売業者が名指しされています。

 マスクが品薄となった原因のひとつに、新型コロナによる需要増に目を付けた業者が、高額転売目的で買い占めに走ったことが品薄に拍車をかけたであろうことは想像に難くありません。

 昨今、このように、品薄の商品を大量に購入し、ネット上で高額販売する業者がしばしば現れ、「転売ヤー」などと揶揄され、問題視されています。

 転売業者の中には、自分たちは小売店と変わらない、商品を安く仕入れて高く売るのは当然の市場原理だという者もいます。

 しかし、転売業者は、メーカー、卸売業者、小売店という物流の流れにより安定供給が図られているその末端に待ち構え、本来消費者に行き渡るはずの商品を買い占めて高額で売りつけるものです。むしろ、スムーズな流通を阻害しているわけですので、このような行為は批判されて当然でしょう。

 実際にコンサートなどのチケットについては法律により、既に一部の転売行為が禁止されています。

「高額転売業者から購入しない」ことが一番の自衛策

 それでは、一律に高額転売を規制すべきかというと、そう簡単な問題ではありません。

 そもそも中古品の売買は世の中で広く認められていますし、広範囲な規制は自由な経済活動を委縮させる弊害があります。

 たとえば今回の措置も、ごく普通の個人による一過性の転売も規制の対象に含まれています。

 今回に関しては、緊急時に「業者による転売」と「個人による転売」を区別するのはなかなか難しく、やむを得ない側面があるでしょうし、一時的な措置であるため弊害も小さいのではないかと思われます。しかし、通常は、個人が一過性で転売する場合まで規制するのは自由な取引社会の空気を奪い、経済活動全体の委縮に繋がりかねないと思われます。

 このように転売業者に対する規制にはジレンマがあり、一概に規制するというわけにいかないのが実情です。

 もっとも、市場原理に即していえば、転売業者も買い手がいなければ販売できません。

 結局のところ、今回のような緊急時になるべく流通を途切れさせることなく、日常生活を守るためには、普段から「高額転売業者からは購入しない」のが、遠回りながらも一番の自衛策になるのではないでしょうか。

  
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