前向きに読み解く経済の裏側

2020年3月16日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

外部不経済の抑制は容易ではない

 公害企業は、生産を続ければ自社が儲かります。それにより周囲に迷惑をかけていますが、そんなことは知ったことではありません。そこで政府が乗り出すことになります。

 操業を禁止すれば良いかというと、必ずしもそうとは言えません。工場が1億円の利益を出していて、周囲が被っている迷惑が100万円分しかないという場合に、操業を止めさせてしまうのはもったいないからです。

 工場の操業で周囲に100万円分の迷惑をかけているとすれば、政府が工場に100万円の罰金を課せば良いのです。工場が稼いでいる利益が100万円以下であれば、自主的に操業を止めるでしょうから、問題ありませんし、工場がそれ以上に稼いでいる場合には操業を続けるでしょうが、周囲の人々には100万円の迷惑料を政府が払ってやれば良いわけです。

 しかし、若者が罹患したからと言って、罰金を課すわけには行きません。若者が罹患したことにより周囲の高齢者が感染する可能性が高まったわけですから、迷惑料を払って欲しいのに。

 理論的には「若者が遊びに行くことを禁止して、違反者には罰金を課す」ということが考えられますが、そこまでやるのは現実的ではないでしょう。

 そうなると、若者たちには「遊びたいのはわかるが、君たちが罹患すると高齢者の迷惑になるので、我慢してね」と頼むしかないわけです。若者の「世の中に迷惑をかけてはいけない」という道徳心に訴えるわけですね。それがどれくらい効果があるのかは不明ですが。

 ちなみに、今のところ、若者たちも新型コロナを恐れているようで、罹患しないように注意している模様です。それは安心材料ですね。彼らが「自分たちは罹患しても大丈夫だから、ビクビクしないで遊びに行こう」と思うようになると危険ですが、そうなる前に流行が収まってくれることを期待しましょう。

風疹の予防接種を男性に義務化しよう

 余談ですが、今回と類似のものとして、風疹の予防接種が挙げられます。妊婦が風疹に罹患すると先天性風疹症候群の子どもが生まれて来る可能性が高くなります。したがって、女児の親には風疹の予防接種を受けさせるインセンティブが比較的強いでしょう。

 問題は、男児の親には風疹の予防接種を受けさせるインセンティブがそれほど強くないだろう、ということです。今は予防接種が義務なので、男児も多くが接種を受けているでしょうが、かつて義務でなかった頃の男児は受けていなかったかもしれません。

 そうした人は、大人になっても予防接種を受けるインセンティブが小さいので、自分が罹患する可能性は結構あるはずです。その際、自分が周囲に感染させ、それが妊婦への感染につながる可能性もあるわけです。

 これも外部不経済でしょうから、免疫のない男性にも接種を義務付けるべきでしょうね。

 今回は、以上です。

  
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