「店の売上が減ったとしても、仲良くしよう」
快感情を増やすために気をつけているのは、意見が正しいかどうかを基準に話し合わないこと。「正しさ」を基準に物事を決めると、正しくない人が現れます。「正しさ」を基準にすると、話し合いが単なる口げんかになりがちです。むしろ、その意見をみんなが気にいるか、好きかを大切にしています。「正しいか、悪いか」といった二元論だと、そこには必ずぶつかり合いが生じます。
話し合いの場では私たちは、「それが正しい意見であることは十分にはわかるのだけど…」と提案者にまず伝え、「それが、いいよね、楽しいよね」と言い合えるものを求めて話し合いを続けます。みんなが納得できて、気分がよくなるものを大事にしたいのです。つまりは、快感情ですね。このようにすると、職場がしだいに柔らかい雰囲気になります。これが、大切だと思うのです。経営者になる前から、多くの人に喜ばれることをするのが好きでした。生きていくうえでの励みでもありました。だから、互いに納得して、気分がよくなる会社にすることを大切にしています。可能な限り、多くの人が「いいね」と言えるようにしたい。
たとえば、アルバイトを正社員にするか否かを決めるのも、全正社員21人が参加するミーティング(通常、毎週1回開催)で決めます。基本的には、全員が賛成しないと、正社員として採用はしないようにしています。現時点で人手不足で苦しんでいるわけではありませんから、みんなの合意がない中、私が強引に採用をすることはしません。同じ店舗で働く店長や社員たちが、アルバイトのふだんの働きなどをよく見ていますから…。ねじこむ?いえ、そのようなことはしません。私としても、メリットがないですから。
9年前から新卒(大卒、専門学校、高卒)の採用を始めましたが、その場合も、基本的には正社員が集うミーティングで決めます。1∼2年のペースで雇い、現在までに16人になります。うち、家庭の事情で退職をしたのが2人です。この業界で同規模の会社と比べると、定着率は高い方だと思います。
ふだんから「店の売上が減ったとしても、仲良くしよう」と言っています。売上が落ち込むと、店がどよーんと沈んだ雰囲気になる場合があります。弊社の店舗がある地域では、新たに店が出店すると、2∼3カ月間は売上がそれ以前の2∼3割は落ち込みます。4カ月が過ぎるとお客さんがまた、弊社の店に来ていただけるので、元のレベルに戻ります。ここ15年間、このようなペースです。売上が落ち込む2∼3カ月間はお客さんが戻ってきていただける時に備え、準備をしておこうと話し合っています。
最近は、コロナウィルスの影響でお客さんが減り、売上が落ち込みつつあります。このような時こそ、社内では快感情を増やしていきたいのです。アルバイトの学生の中には、弊社での仕事の報酬で生活費や学費を補っている場合も少なくありません。本人と話し合いのうえで希望がある場合は、勤務シフトにできるだけ入ってもらえるようにしています。いつになるのかわかりかねますが、コロナウィルスも影響が沈静化し、元の状態に戻った時、お客さんに喜んでいただけるように準備をしているのです。
社員やアルバイトには、経営者である私がしてもらったらうれしいな、と感じるようにしています。私からすると、お客さんはもちろん、社員やアルバイト全員が喜ばせる対象です。ここがしっかりしていないと、調理や接客の技術を教えようとしても、心に伝わらないのです。
みんなのことをどれほどに真剣に、時間をかけて考えているか。それは、聞く側がその人の発する言葉の中に、何かを感じるものではないかと思います。たとえば、「この人はここまで自分たちのことを考えていてくれたのか」と感じるように。その考える努力が見えると、「尊敬」に変わるのでないでしょうか。私も慕われる経営者になりたい、と思っています。
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