From NY

2020年4月9日

»著者プロフィール
閉じる

田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

小売りの品薄は続く

 トレイダージョーズなど普段でも込み合う人気スーパーに行くと、外まで人々が2メートルほどの距離を取りながら長蛇の列をなしている。中が混雑しないよう、入場制限をしているためだ。

 幸い筆者の住む近所のローカルなスーパーでは、入るために外まで並ぶことはない。だが流通のせいもあるのだろう、品ぞろえは確実に減ってきた。

 またドラッグストアに行っても、未だにマスク、トイレットペーパー、消毒アルコール、そして新型感染者が使用しても安全といわれているアセトアミノフェン含有の鎮痛剤「タイレノール」は、棚から消えたままである。店員に次の入荷を確認しても「わからない」という返事だった。

無料で食事を配布

 4月3日金曜日には、「今日からニューヨーク市は、無料の食事を支給します」というお知らせが来た。

 3月16日から公立も私立も学校は全面的に閉鎖され、子供とその家族には給食が無料で支給されていた。4月3日からは子供のいない市民たちにも、市内およそ400か所の公立学校で朝、昼、晩の食事が無料で支給されることになった。身分証明書の提示などは必要なく、もちろん市民権や永住権の有無などを問われることもない。

 筆者が写真撮影のために近所の公立小学校に行ってみると、確かに外に「Free Meal」と張り紙がはってあった。だが意外にもここでは誰も並んでおらず、高齢の女性が一人受け取っていただけだった。まだ情報が行き渡っていないのか、あるいはそれほど困窮している人々はそれほど多くないのか。

 中に入るとマスク姿の女性と警備員が一人。机の上に、大型のアイスボックスがいくつか置いてある。

 「朝食ですか? ランチですか?」そう声をかけられた。希望すれば、3食分一度に持ち帰ることもできるという。

 幸いなことに筆者はまだ食事に困るほど困窮していないが、数に余裕があることを確認し、撮影用にランチを一食分もらってきた。

 

 この日のメニューは子供たちが大好きな、ピーナッツバターとジャムのサンドイッチ。袋に入ったハーブソルト付きのキャロットスティック。ミルクとコーンチップスだった。大人のランチとしてはちょっと物足りないけれど、当座をしのいで生命維持をしていくには十分だ。

 No one will be turned away.(誰も拒否されません)と書いてあるサインが、厳しい現実に面した今のニューヨークにも古き良きアメリカはきちんと残っていることを再確認させてくれた。

 4月4日から2日連続で、ようやく死亡者の数の増加がスローダウンしつつある。クオモ知事の険しい表情も、少しだけ余裕が見えてきた。

 ニューヨーク市の感染者数がピークに達するのは、およそ1週間後と予想されている。多くの犠牲者を出したイタリア、スペインは感染が減速してきたと言われている。このトンネルの先に、光は見えてきたのだろうか。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る