携帯電話が振動して、SMSメールを受信した。
「ニューヨーク州の外出禁止令は4月29日まで延期されました。必要不可欠(Non-essential)な職務に従事する人々以外は、4月29日まで在宅勤務を続けてください」
ニューヨーク市ビル・ブラジオ市長のオフィスは、3月9日にこの新型コロナウイルスのホットラインを設置。登録した市民たちの携帯電話に、日々最新情報がSMSメールで届くのである。
ニューヨーク市で最初の新型コロナの感染者が報告されたのが3月1日だった。そしてこの原稿を執筆している4月5日現在、市内で確認された感染者の数は6万4955人。ニューヨーク州全体の感染者12万2031人の半数以上が、ニューヨーク市に集中していることになる。
「できることは全てやっているのに」
政治家たちは、決して手をこまねいて見ていたわけではなかった。
3月7日にアンドリュー・クオモ・ニューヨーク知事がいち早く州の緊急事態宣言をし、消毒剤の配布などを手配。17日にはレストラン、バーなどの飲食店はダイニングスペースを閉鎖して、テイクアウトのみの営業に。そして3月22日から、必要不可欠な業種(Non-essential workers)以外の市民は、可能な限り外出をしないようにといういわゆる外出禁止令(Shelter-in-place)が施行された。
(Non-Essential Workerとは、医療、食料品店、ドラッグストア、銀行、公共の交通機関、タクシー、ガソリンスタンドなど、人々が生活していくために最低限必要な職種以外の、すべての職種を指している)
それでも感染者も、そして死者も増え続けた。このところ週末も含めてほぼ毎日のようにカメラの前で会見を行ってきたクオモ知事は「できることは全てやっているのに、それでも人々は亡くなっていく」と悲痛な声をあげた。
「買い物は1人で。顔は覆って」
筆者も自宅にこもりすでに3週間目に突入となった。と言っても、まったく外に出ないわけではない。今やどこの注意書きでも目にするSocial Distancing (他人との一定距離を保つこと)さえ守っていれば、食料を買い出しに行ったり、ドラッグストアに買い物に行くことは普通にできる。グループで固まって行動しなければ、新鮮な空気を吸いに散歩していても、街角で警官にとがめられることはない。
ホットラインから送られてきたSMSメールには、こう書いてあった。
「買い物に行くときは、混雑を避けるために各家庭一人ずつにしてください。顔は覆って、パニック買いはやめましょう」
当初はマスクは感染予防に効果はないと言われていたが、ニューヨーク市でもついにマスクの着用を奨励するようになったのだ。このところ外を歩いていると、半数以上の人たちが、マスク、バンダナなど、何らかの形で顔をカバーしている。