2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2012年5月30日

和久井映見の演技に再び注目

 「もう一度君に、プロポーズ」。竹野内演じる夫が妻の和久井に、最終回でプロポーズするエンディングを予想させるタイトルは、視聴者に対して挑戦的である。

 和久井が扮する宮本可南子は、図書館の司書である。図書館の近くの公園で、子どもたちに絵本を読み聞かせる練習をしていた可南子と、たまたま昼食をとっていた、竹野内が夫役の自動車整備工の波留は知り合い、結婚する。

 可南子はくも膜下出血によって倒れ、一命を取り留める。しかし、波留と出会いそして結婚した期間の記憶だけを失ってしまう。手術後にベッドで目を開いて、心配そうに見守る波留に向かって、可南子は言う。

 「どちらさまでしたっけ」と。

 いったんは自宅に戻った可南子だったが、見知らぬ男性となった波留とは暮らしがたく、実家に戻る。

 ドラマは、ふたりの感情をあや織りながら、可南子のかつての恋人と波留に思いを寄せる職場の若い女性整備工が絡む。自宅に残された可南子の日記を読みながら、波留はなぜ妻の記憶が自分に関する部分だけが欠けているか、探ろうとするがわからずに、悩みは深まる。

 「離婚しよう」

 波留は可南子に告げる。

 第6話、2012年5月25日放映のラストシーンである。友人の結婚式が終わったあと、ふたりで残った教会。ふたりもここで式を挙げた。結婚の宣誓のなかで、神父の問いに「誓います」と大きな声で参列者の笑いを誘った波留に続いて、可南子も大きな声でこたえたシーンがフラッシュバックで挿入されたあと、この回はエンディングを迎えた。

非日常的な映画で魅せた脇役の現実感

 90年代にドラマの主役を務め続けた、和久井の演技に、筆者が最近再び気づいたのは、映画の脇役としてのそれだった。

 大奥の男女の役割が逆転するという奇想天外な発想の「大奥 男女逆転」(2010年)では、柴咲コウ演じる徳川吉宗の側近の加納久通を。大阪国が存在し、その秘密を大阪生まれの男子が引き継ぎ、王女を守るという「プリンセス・トヨトミ」(2011年)では、総理役のお好み焼き屋の主人の妻を演じた。「ほんまに、大阪の男はしょうがないわ」と大阪弁の和久井のセリフがエンディングである。

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