2024年3月5日(火)

イラクで観光旅行してみたら 

2020年5月2日

殺害された夫と、浮気した夫

 その間、イラクではいろいろなことがあった。まずは2003年、イラク戦争が開戦し、治安が急激に悪化した。

 アメリカ滞在中の2006年に、ラフィッドは最初の夫が何者かに殺されたと知る。彼はアメリカ軍と働いており、ちょうど宗派対立が激しい時期だった。元夫は自分の家の前で殺されていたそうだ。

 そしてその後、2番目だった妻もアメリカの別の地域にラフィッドの2人の子どもも含め移住してきた。その妻はラフィッドのところへ長女を会いに来させた。しかしその時は息子のほうは嫌がって来なかった。自分は捨てられたなどの感情があったのかもしれない。

 そして2012年頃、2番目の夫の浮気が発覚した。しかも相手はラフィッドの親友だった。裁判をし、最終的に子どもの親権は夫にいくことになってしまう。そして自分はイラクに戻ってきた。ラフィッドのおかげでアメリカに住めることになったのに、そのラフィッドは今はイラク、彼はまだアメリカに住み続けているというなんとも複雑な状態になった。

 その後、ラフィッドは会うことを拒否されていた最初の夫との息子にも会うことができ、彼が結婚して子どもが生まれた時には子育てを手伝いにアメリカに住んだりもしたそうだ。

 今はイラクで母と姉妹と住んでいる。2番目の夫との子どもとは会えないそうだ。前回、会おうとしたら娘が父親が怒るから連絡しないでと言ってきたからだ。でも彼らももう成人するし自分の意思で会うかどうか決められるようになると思うとラフィッドは言った。

バグダッドのおしゃれカフェ

イラクの結婚事情

絨毯専門の露店

 若いメイもマルワもラギーダも目をまん丸に、耳を澄ませて聞き入っていた。ヒジャーブをせず、比較的自由に出歩けるメイやマルワ、海外のNGOで働いてきたラギーダにとっても、こんな女性の経験は衝撃だったのかもしれない。数十年でこの変化と考えるべきか、いや、見えないだけでこんな経験をしている人はまだまだたくさんいるのかもしれない。

本屋街で有名なバグダッドのムタナビ通り

 イラク人女性の結婚問題。2017年11月にイラクでは8〜9歳の女子であれば結婚できるという法律が国会で審議されたそうだ。最終的には否決されるも、そういう議論が可能なのだ。この華やかなバグダッドモールがオープンしたそのほぼ同時期に、そんなことが議論されていたのだ。

 現状の法律では18歳が結婚できる年齢だが、場合によってはそれ以下の年齢でも結婚できると認められている。イラクでは約5%の女性が15歳以下で結婚し、24%の女性が18歳以下で結婚している。預言者ムハンマドの妻の1人、アイシャが9歳の時にすでに結婚し、関係をもっていたことからそのような解釈が一部で生まれたという。

 一部の宗教指導者自らが児童婚や児童買春を斡旋を行っているとBBCのドキュメンタリー「Undercover with the Clerics: Iraq's Secret Sex Trade」でも報じている。

 15歳で結婚し様々な困難を経験しながら、こんなにアクティブで、知的で、他人に優しくできる余裕を持てるだろうか。あらためてラフィッドの強さ、優しさに惹きつけられる。しかしその一方で逃れたり、他の道を探ろうとしたりすることさえ困難な多くの女性たちがいる。

 女子会トークは夜まで続いた。

  
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