湿地での暮らし
ふたたびボートに乗って移動。水の上から見て周る。人々が暮らしている土が堆積してできた集落があり、葦で作った家や、葦の上にテントをかけた家が建っていた。人様の住んでいる場所をボートでまわるなんて嫌がられても仕方がないのだが、大人も子どもたちもボートが通ると手を降ってくれた。女の人も働いているようで、アバヤを着てボートの上で作業をしている様子はたくましい。
その後、湿原での暮らしに関するものを展示した資料館を訪ねた。サダムが侵略する以前の昔の暮らしを収めたビデオが上映されていた。途中から再現映像になっていたようだが、人々は歌を歌い、学校に通い、結婚式を挙げる。突然、何かが爆発し、死体がアップで映された。サダム政権によるシーア派蜂起を弾圧した様子だ。
この2日の間に、スンニ派が中心のモスルに暮らす友人と話し、シーア派の人たちの街を訪ね、バグダッドの比較的裕福な層であろう人たちと過ごし、その中にはクルドの人もいて、そして牛を飼い葦を売る湿原で生きる人たちを訪ねた。
同じイラクといえど、時にまったく違う世界が見えているだろうなと思う。
旅も残りわずか。アリ・マフズミと会うのは今日が最後。別れる際にセルフィーを撮ってくれた。「あとで送ってね」と言ってみた。でも多分彼は送るのを忘れるだろう。また会うことがあればいいな。
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