2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2020年5月26日

感染防止以外の狙い?
集まりを禁止する条例の延長

 また、香港では新型コロナの感染拡大を防ぐため、3月29日から公共の場で5人以上集まることを禁止する条例を制定した。「限聚令」と呼ばれるこの条例は、違反すれば2000香港ドル(約2万8000円)の違反切符が切られ、状況によっては最高で2万5000香港ドルと禁固6カ月の刑となるものだ。

 新型コロナが落ち着いてきたため、5月8日から21日までの2週間は9人以上集まってはいけないルールに緩和した。その間、海外から香港に戻ってきた人たちによる新規感染例はあったものの、香港内では23日連続して感染例がゼロであるなど、かなり状況が改善したため限聚令の解除が期待されていた、しかし、香港政府は5月19日に「公衆衛生の観点からまだ緩められない」として、5月22日から6月4日まで延長を決定した。

 6月4日には天安門事件を追悼する集会が香港で毎年行われているが、この延長によって集会ができないことになった。集会の主催者である香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)は、「引き続き集会の申請を行い、当日は何らかの活動をする」と表明。集会やデモが行われれば、警察はその日は何かしなくても後日、主催者を逮捕する可能性が高い。

 イスラエルの歴史学者・哲学者、ユヴァル・ノア・ハラリが『フィナンシャル・タイムズ』(『新型コロナウイルス後の世界』Web河出)に寄稿した新型コロナについての記事は世界的に大きな話題となったが、その中で、1948年の独立戦争の時に出された非常事態宣言では、プリンをつくることまで規制され、それが解除されたのが2011年だったと書かれている。

 権力者は自分の権限を手放したくないし、うまく政治に利用したいと思うのは世の常で、9人以上集まってはいけないルールも、デモ防止の観点からいろいろな理由をつけて継続させることもあり得るだろう。

9月の立法会選挙まで緊張は続く

 2019年の区議会選挙では民主派が大勝したが、20年9月に予定されている立法会選挙では、その勢いがどこまで続くかは不透明だ。全体としては民主派が勝利するだろうが過半数を取る事は現実としては厳しい。親中派は、中国の力を背景に立法会などで自らの権力をキープしつつ、お金を自由に稼げ、私権を侵されない1国2制度の方が自分自身には「おいしい」のだが、今の情勢からすると「1国1制度を受け入れざるを得ない」と考えているだろう。

 中国政府による香港への圧力は日を追うごとに強くなっている。新型コロナの第3波にもよるが、9月の立法会選挙までは緊張が続くことは間違いない。世界の歴史を見ると、スペイン風邪などでもそうだが、感染症のパンデミックは政治を錯乱させる要因になっており「歴史は繰り返す」が具現化された状況だ。

  
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