世界最大の国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」の香港支部は12月3日、東京の日比谷コンベンションホールで「緊迫の香港情勢~現地からの報告~」と題した講演会を開催。香港支部の譚萬基(MK・タム)事務局長が逃亡犯条例改正案に端を発したデモについて現況を語った。
変化するデモの掛け声
香港のデモについては日本のメディアも少なからず取り上げているが、香港人自らが来日して語るという機会はあまりない。講演会を聞くには事前の申し込みが必要だったが200人の定員はすぐ埋まるなど関心の高さを伺わせた。
まずはタム氏が、100万人、200万人と平和的なデモがつづいたことを説明し、テレグラムなどのSNSを駆使すること、2014年の雨傘運動で内部分裂した経験から、目的が同じであればやり方が違っても相手を認めること、相手をケアする精神があることなどを語った。また、11月24日に行われた区議会選挙で民主派が452議席中388議席を獲得したことを解説した。
タム氏によれば、過去6カ月間に及ぶデモで、香港人が叫ぶ言葉が変わってきたという。最初は「香港人、加油(がんばれ)」が叫ばれていたが、香港政府が10月5日から「緊急状況規則条例」(緊急法)を運用し、マスクの着用を制限する「禁蒙面法」を制定した後は「香港人、反抗」に変化。そして男子大学生の周梓楽さん(22)が11月8日に亡くなると「香港人、復仇(復讐)」に変化したという。
「マスクが禁止された日を境に、事実上、平和的なデモが出来なくなりました。そしてデモがパターン化していきます。デモが始まり、だいたい30分後に警察が介入し始め、デモ隊が抵抗する……といった流れです。デモ隊は火炎瓶やレンガを駆使しますし、警察も催涙弾や放水車で対抗します。けが人が出るのは当然です」
今回のデモでは5000人が逮捕され、その多くが若者だ。「実際の逮捕者の中で起訴された割合は2割前後ですから、逮捕はデモ隊の心をくじくべく見せしめの部分があると言えるでしょう。逮捕された後の就職問題が表面化してきているので、市民団体が就職難に陥りやすい学生を支援する動きが出ていています。これも先程述べた『ケア』の一環と言えるでしょう」
今もデモが収束する気配が見えないが、「逃亡犯条例改正案の撤回がデモの主な目的でしたが、現在は警察の過剰な暴力に抵抗するということに変わってきています。アムネスティとしてもこの部分にフォーカスを置いています」と焦点の変化を話した。「6月22日にアムネスティ香港はデモに関する第1弾のレポートを作成し、国連に提出しました。約30人の逮捕者にインタビューしたのですが、警察は拷問を行い、適切な治療をしていないことが明らかになりました」