黒人票を固めたバイデン
トランプ大統領が新型コロナ及び人種問題の対応で成果を出せない間に、バイデン前副大統領は確実に黒人票を固めました。米ワシントン・ポスト紙とグローバル・マーケティング・リサーチ会社イプソスが18歳以上の黒人を対象に行った共同世論調査(20年6月9~14日実施)によれば、「仮に今日大統領選挙が行われたら、どちらの候補に投票するか」という質問に、92%がバイデン氏と回答しました。
トランプ大統領に投票すると答えた黒人は僅か5%でした。16年の米大統領選挙でトランプ氏は黒人票の8%を獲得しています。
一方、クリントン氏は黒人票の89%を得ました。おそらく、バイデン氏はその数字を上回るとみて間違いありません。
ちなみに、08年及び12年の米大統領選挙でオバマ元大統領は黒人票の95%並びに93%を得ました。今回の選挙でバイデン氏はオバマ氏の数字に迫るでしょう。
さらに米ワシントン・ポスト紙とイプソスによる調査で、黒人の有権者は最も重視する大統領選挙の争点として、警察組織改革と人種差別問題を挙げました。バイデン前副大統領は中西部ミネソタ州ミネアポリスで発生した白人警察官による黒人男性暴行死事件に関して、黒人に感情移入を行い、寄り添う発言をしています。例えば、警察官が容疑者を逮捕する際、彼らの首を絞める行為の全面的禁止を支持しています。
これとは対照的に、トランプ大統領は部分的禁止に止めました。警察官が身に危険を感じたときは、容疑者の首を絞める行為を許可したのです。トランプ氏は警察官を擁護する発言を繰り返ししています。この差が、黒人のバイデン支持率に明確に現れたといえます。
バイデンの「異文化連合軍」
12年米大統領選挙においてオバマ前大統領は、女性、黒人、ヒスパニック系(中南米系)、若者及びLGBT(性的少数者)から構成された「異文化連合軍」を形成して再選しました。これに対して、16年大統領選挙でクリントン元国務長官は、オバマ氏が黒人及びヒスパニック系から得た同等のレベルの熱意を勝ち取ることができませんでした。
さらに悪いことに、クリントン氏は若者をバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)に奪われ、オバマ前大統領のように完璧な異文化連合軍を組めませんでした。
では、バイデン前副大統領は果たしてオバマ氏のような連合軍で票を獲得できるのでしょうか。
バイデン氏は「反人種差別」の抗議デモに参加している黒人、ヒスパニック系及び若者を異文化連合軍に取り込むことができるかのが鍵を握ります。彼らは「反トランプ」なので、その可能性は高いといえるでしょう。