自分よりも優秀な人を採用する
起業やネット進出のリスク?当時は、それほどに感じませんでした。この13年間で成功する手段を知ってしまったのです。スタッフにも言います。あきらめなければ、夢は叶うんですよ。企業経営以外の世界でも、外的要因に左右されることなく、自分の力で完結できることをあきらめずにやり続ける人が勝つのだと思います。その意味で、我慢比べのレース。あきらめることなく、続けられるならば続けたほうがいい。いつかは、叶いますよ、きっと。私も、その思いで続けてきたし、これからもそうありたい。
都内のベンチャー企業を退職し、実家に戻ったのが26歳。長女が、妻のお腹の中にいた頃です。農機具の修理工場を営む父と、21歳の弟の3人で話し合いました。なんとか、3人や家族がメシを食えるくらいを稼ぐ会社か、それとも豊かな暮らしができるほどの収入を得る会社にするか…。2人は、後者を選んだのです。ただ、13年後の今、たとえば高級外車を買うことはできるのでしょうが、タイミングを間違うと、私も「使えない上司」になりかねない。会社の経費を使い、高級外車を買うとスタッフが不満を感じるかもしれません。
13年間で心が成長し、部下がどう思うか、と考えるようになりました。現在は当時より業績が拡大し、規模も大きくなりました。ある時、スタッフとお酒を飲んだ時に、「個室にしてほしい」と言うのです。社長が酔っている姿を周囲に見られるのはよくないと思ってくれたみたい。ちょっとうれしかった。そんな言葉をかけられることに、幸せを感じるようになっています。
初めて雇用をした時から決めているのは、自分よりも優秀な人を採用すること。そのほうが、圧倒的に成長する。優秀な人が増えると、社長のプライドや威信が低下する? そんなこと、考えませんよ。夢を叶えるためなら、プライドなんて捨てたほうがいい。そんなプライドには、1円の価値もない。「自分より優秀な人を採用しない」といった考えだと、自らの力以上に会社が成長しない。確かに「自分が一番で、社員はみんな下」といった考えの社長もいるのでしょうね。それはそれで1つの考えかもしれないけど、少し「イタい」のかなと私は思います。
社長でも管理職でも、下にいる部下たちのほうが優秀であるべきですよ。部下たちが働きやすい環境を作るのが、社長の仕事なのだと思います。その意味で、部下は自分たちを育ててくれる。うちの会社では、優秀なスタッフ全員で社長育成ゲームをするみたいなもの。会社規模が大きくなってくると、ちょっとしたさびしさはあります。だんだんと、自分から離れていく感じがします。起業した頃から作り上げてきた思いがありますから…。だけど、日本の農業を変えることができるならば、それでいい。会社を私物化する社長もいるようですが、それはしたくない。