2024年4月26日(金)

あの挫折の先に

2012年7月3日

となりの人から見た自分は、
「デキないヤツ」かもしれない

 99年、入社4年目を迎えた依田は、ドイツ万博に出展する椅子の開発を一任された。リクライニングをすると、赤ちゃんのゆりかごのようにゆらゆらと揺れ、座る者を心地よい眠りに誘ってくれる椅子だった。

 「それまで、部品の設計は任されていましたが、椅子全体の設計を一任されるのは初めてなので、気合いが入りましたよ」

 そろそろ仕事もデキるようになってきた、という自信もあった。彼は自分が学んだ知識を活かし、椅子の性能だけでなく、耐久性もまったく問題ないものを作り上げ、満面の笑みでドイツ入りする。ところが、依田は失敗に気付いた。

2000年のドイツ万博では、依田が設計したリクライニングチェアが、パビリオン内に大量に並べられた。

 「いざ椅子を搬入し、組み立て、設置する場面で、いちいち手間取るのです。床に固定するための穴が合わせにくかったり、パビリオンの通路を移動させづらかったり……。その時、いくら仕様通りに動くものを作っても、それだけでは良い設計とは言えない、と気づきました」

 彼は課長の顔を思い浮かべた。やはり、気づきは大切だ。初めての仕事に挑戦する時は、誰も何も教えてはくれない。

 その後、彼はあえて、彼が設計した商品を組立てる人、さらにはお客様が家に設置している様子などを実際に見るようになったと言う。

POINT
仕事の多くは、自分以外の多くの人の手が加わり、ようやく完結するもの。自分の仕事を理解するだけでなく、時には自分に仕事を任せる人、自分が仕事を頼む人、さらには上司や経営陣の思いなどを理解すると、仕事がうまくいくのは当然の帰結だ。そして、最も重要なことは「他社や他部署の人は仕事を教えてはくれない」ということ。だから、わざわざ見に行き、学ぶことが重要なのだ。


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