大統領ではなく、議会の権限
選挙日程の変更については、大統領に権限がないことが憲法にきちんと明記されている。憲法第2条は大統領選の実施日については議会が決めると規定しており、1845年の連邦法で「11月の第1月曜日の翌日の火曜日」と定められて以降、変更されていない。大統領の在任期間も選挙のあるなしにかかわらず、4年任期の1月20日までと記されている。
しかし、現実問題として予測のつかない選挙になることは間違いないだろう。最大の問題は郵便投票が大規模に実施された場合、大統領が主張しているように、結果がすぐに判明しない公算が大きいからだ。米メディアによると、現時点で有権者の77%が郵便投票を行えるようになっているという。
このまま感染拡大が続けば、投票所に行って投票する有権者はますます減り、郵便投票が増えることは確実だ。実際に6月23日に実施された連邦議員を選ぶ予備選では結果の判明が大幅に遅れたケースがあった。例えば、東部ニューヨーク州の下院予備選で当選確実が出たのは7月17日だった。郵便投票が増えて事務作業が追い付かなかったことが原因だという。南部ケンタッキー州の上院予備選でも確定するまでに1週間かかった。
ニューヨーク・タイムズ(7月31日付)はトランプ大統領が選挙に向け、郵便システムをさらに妨害しようとする懸念が高まっていると報じている。具体的にはこの数週間、大統領によって新たに任命された郵政公社総裁の指示により、その日のうちに郵便配達を完了させるために必要な配達員や事務員の残業手当の支払いが差し止められているという。
このため郵便や小包の配達に数日の遅れが出ているという。反トランプ派は郵便への信頼性を低下させ、郵便投票を制限しようとする意図的な工作だと批判している。大統領選まであと3カ月。コロナ禍が拡大する中、選挙は大きな混乱の渦に巻き込まれようとしている。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。