中東を読み解く

2020年7月8日

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( REUTERS/AFLO)

 イラン中部ナタンズで7月2日に発生した核関連施設の火災はイスラエルの情報機関モサドの破壊工作による爆破説が濃厚となってきた。被害現場の衛星写真などから、爆発は施設内部に仕掛けられた爆弾による可能性が強く、イランの核開発が大幅に遅れるのは必至だ。イラン側が報復に出る恐れもあり、両国の緊張が再び高まっている。

破壊された高性能遠心分離機

 イランでは今回の核施設だけではなく、先月26日にテヘラン近郊のパルチンにあるミサイル製造施設内で大きな爆発が起きたのをはじめ、2つの発電所でも爆発事件が相次ぐなど不穏な空気が流れていた。当局は一連の出来事を事故と発表しているが、テヘランにはイスラエルや米国の情報機関による破壊工作ではないかとの観測が広まっていた。

 今回爆破されたと見られるナタンズの施設は2018年6月、トランプ米政権がイラン核合意から離脱した後、最高指導者ハメネイ師の指示により稼働を開始したもので、ウラン濃縮に使用される最新の高性能遠心分離機の開発や組み立てが目的だ。高性能の遠心分離機は核開発に必要な濃縮ウラン製造の時間を短縮するのに不可欠な装置である。

 一般的に、核爆弾1個を製造するのに約1000キロの低濃縮ウランが必要とされる。イランは米国以外の5カ国との核合意を辛うじて維持するものの、トランプ政権の核合意離脱と経済制裁に反発。一部合意を破って核開発を始め、国際原子力機関(IAEA)によると、イランの低濃縮ウランの貯蔵量が2月中旬時点で、1020.9キロに達した。合意による低濃縮ウランの貯蔵上限は300キロで、保有量は3倍以上に達したことになる。

 一方で、核爆弾に使用されるウランは90%まで濃縮されたものが使用されるが、イランはウラン濃縮度を原発燃料級の4.5%にとどめ、濃縮度を高める姿勢をちらつかせながら、これを経済制裁解除や、制裁による経済的損失補償を獲得するための「交渉カード」として利用している。専門家の間では、核爆弾の製造まで「3カ月から4カ月」との試算もあり、イスラエルや米国はイランとの新たな交渉開始か、武力で核関連施設を破壊するかの選択を迫られている。

 7月5日付のニューヨーク・タイムズは中東の情報当局者の話として、ナタンズの施設について、イスラエルが強力な爆弾を使って爆破したと報じた。このため、これまでもイラン国内での科学者暗殺や破壊工作を繰り返してきたイスラエルの情報機関モサドの秘密作戦である可能性が浮上している。モサドと米中央情報局(CIA)はイランの核武装阻止のためにサイバー攻撃などさまざまな作戦を展開してきた。

 イラン側は当初、単に「火災が発生した」としていたが、その後、イラン原子力庁の当局者は遠心分離機などが破壊され、経済的に甚大な被害を受けたとし、核開発計画に数カ月の遅れが出ることを認めた。同紙によると、イラン革命防衛隊当局者は「爆発物による破壊工作」としている。

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