WEDGE REPORT

2020年7月20日

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 新型コロナウイルスの米国の感染者は7月19日現在で370万人を超えて世界最多を更新しているが、この惨状の原因を作ったのが「ウイルスとの戦いの責任を各州に押し付け、トランプ大統領をコロナ対応の枷(かせ)から外そうとしたホワイトハウスにある」ことを米ニューヨーク・タイムズ(18日付)が暴露した。再選を最優先したトランプ政権の失敗の内幕を詳細に伝えている。

(Tanaonte/gettyimages)

メドウズ首席補佐官の部屋で“密議”

 同紙はこの記事の執筆に当たり、政権や州当局者ら20数人とインタビューしたほか、関係者のメールのやり取りや資料を調査したとし、「大統領と側近らは、速やかな経済再開の希望や再選見通しが低くなっているにもかかわらず、科学的な研究やファウチ国立アレルギー感染症研究所長のような専門家のウイルス封じ込めの助言を無視し、現実をねじ曲げ続けようとした」と厳しく指摘している。

 同紙によると、大統領は3月末、大統領執務室でファウチ氏やバークス博士(コロナ対策調整官)らと会談、国民に求めた「外出自粛措置」などの延長が必要かどうか、意見を求めた。感染症の最高権威として歴代政権に仕えたファウチ氏がその必要性を主張し、大統領もこの時は延長に同意した。しかし、水面下では、大統領や側近らによってコロナ対応の責任を連邦政府から州に移し、大統領の負担と責任を軽減する計画が練られていた、という。

 こうした計画の中心は下院議員からホワイトハウス入りしたばかりのメドウズ首席補佐官だった。大統領は再選に向け、1日も早い経済の再開を願っていたが、首席補佐官らはこうした考えを忖度し、大統領執務室に近い首席補佐官室で毎朝8時から極秘の会議を開き、協議した。

 会議の出席者は大統領の娘婿のクシュナー上級顧問、リデル次席補佐官、グローガン補佐官(内政担当)、ショート副大統領首席補佐官、ハセット補佐官(経済担当)らだった。ほとんど全員が公衆衛生分野の素人ばかりだったが、必要に応じてバークス博士が出席した。

 トランプ大統領は4月中旬、経済再開のための指針を発表し、それ以降「コロナ対策は州の責任」として、経済と学校を再開するよう州知事らに圧力を掛けていくが、この秘密チームのまとめた計画に沿って事実上、「責任を放棄した」行動を取ったと見られている。同紙は連邦政府から州に責任を移したこの政策転換が「現在の新たな感染拡大の原因になった」と指摘している。

「イタリアと同じように終息」の楽観論に飛びつく

 メドウズ首席補佐官らのチームが頼ったのはバークス博士だった。博士はワシントン大学の研究結果などを基に独自の「感染予測」を用い、「感染拡大は4月中旬にピークに達し、その後減退する」との楽観論を主張した。博士と対照的にファウチ氏は、ウイルスは制御が困難になるだろう、と慎重論を唱えた。

 このため、ファウチ氏は次第にホワイトハウスの中枢からは遠ざけられ、6月初めを最後にトランプ大統領と会う機会は与えられなくなる。大統領はファウチ氏について「良いやつだが、多くの間違いを犯した」と述べるなど敬遠、大統領の側近らがファウチ氏のテレビ出演を一方的にキャンセルするといった“いじめ”が公然と行われるようになった。

 一方で、バークス博士は大統領が「エレガントだ」というほどのお気に入りになった。博士は「秘密チームが望むようなもの」を定期的に出し、「米国がイタリアと同じ経路をたどっている」として、イタリアと同様に感染拡大が収まるとの考えを示した。

 メドウズ首席補佐官らは博士の楽観的な分析に飛びつき、大統領にも博士の考えが伝わった。博士は自分の執務室を与えられ、ホワイトハウスを自由に動き回った。だが、イタリアが厳格な外出規制などの自粛措置を最後まで通したのに対し、博士の予測は社会的距離の順守やマスクの着用といった必要条件を適切に取り入れていなかった。

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