感染者の10倍も見逃していた
6月初めから急速に新たな感染の拡大が始まり、博士の分析は完全に間違っていたことが証明されることになった。トランプ大統領の圧力で5月中旬には全州が何らかの形で経済の開放に動いたが、とりわけフロリダ、テキサス、アリゾナ、アラバマ、サウスカロライナなど早々と経済再開を打ち出した南部諸州で感染が急速に拡大した。
例えば、サウスカロライナでは4月下旬と比べて感染者は11倍に、テキサスでは同様に8倍になった。4月中旬には1日の感染者が最高3万6000人だった人数も、7月16日には7万5000人以上に増えた。米疾病対策センターの高官は「4月~5月には感染者の10倍も見逃していた」と認めている。
同紙によると、トランプ大統領も大きなジレンマに陥った。経済再開を要求して州に圧力を掛けたが、再開には安全確認のためPCR検査を増やさなければならず、増やしたところ、感染拡大がより明確になってしまったからだ。このため大統領は、今度は検査の抑制を働き掛けるという「指導者としての役割放棄を露呈する」格好になった。大統領は、最近ではPCR検査自体の重要性を軽視する発言を繰り返している。
ホワイトハウス当局者は6月初めになってやっと、自分たちの見通しが誤っていたことを認め、南部諸州での感染拡大は大統領が経済再開の圧力を掛けた5月に事実上広まったものである、との結論に達したが、現在でも政権内部では現状認識をめぐって分裂している。
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