トランプ大統領は6月20日、11月の大統領選挙に向け、南部オクラホマ州タルサで約3カ月ぶりに大規模集会を開いた。今回の集会は支持率で民主党のバイデン前副大統領に後れを取る大統領にとって“反転攻勢”を狙ったものだった。だが、前宣伝とは大きく異なり、会場は空席が目立った。「集会が思惑外れに終わった」(米紙)ことで、大統領の再始動に早くも赤信号が灯った。
人が少なく、第2会場イベントを中止
そもそも今回の遊説は当初、19日に設定されていた。しかし、この日は歴史的な「黒人解放記念日」。全米で黒人差別撤廃運動が拡大している中、差別的な言動を繰り返してきたトランプ氏が集会を開けば、人種間の衝突が起きるといった懸念が考慮され、20日に延期された経緯がある。
しかもタルサは1921年、黒人約300人が白人の暴徒によって虐殺される事件が起きた地である上、同州を含め南部や西部で最近、コロナウイルスの感染が急速に拡大し、公衆衛生当局が集会に強い懸念を表明、トランプ陣営に批判が高まっていた。
だが、トランプ大統領は集会開催を強行した。なぜか。最近の支持率調査で軒並み、バイデン氏に大差(CNN調査で14ポイント差)を付けられ、とりわけ絶対に勝たなければならない中西部の激戦州で水をあけられている、という厳しい現実に直面していたからだ。
ワシントン・ポストによると、特にミシガン州では1月に、バイデン氏を6ポイント差で追いかけていた支持率が16ポイント差に拡大、ウィスコンシン州でも約10ポイント差に広がった。トランプ氏は危機感を深め、コロナ禍で自粛していた遊説を早期に再開、支持者に直接働きかけることで劣勢を挽回しようと図った。それがタルサでの集会を開いた理由だ。
会場となったのは1万9000人収容のアリーナ。トランプ氏は集会開催前のツイートで、20万人が入場チケットを求めているとし、また同氏陣営も百万人を超える支持者らが集会への参加を希望していると宣伝していた。しかし、実際にフタを開けてみると、「3分の1は空席」(ニューヨーク・タイムズ)状態。会場の動画を見る限り、「アメリカを再び偉大に」というロゴの入った赤い帽子をかぶった支持者らの熱気も盛り上がりに欠けているように見えた。2階席はガラガラだった。
予定では、トランプ大統領はペンス副大統領とともに、会場に入り切れない支持者らのため、アリーナの外に設けられた第2会場でも演説をすることになっていた。だが、こうした閑散とした状況に急きょ、第2会場でのイベントは中止に追い込まれた。
同紙は事情に精通した人の話として、大統領が集まった支持者の少ないことに激怒したという。大統領のスポークスマンは声明で、オンラインで数百万人が集会に参加したことを示唆したが、逆に集会の参加者が期待していたより、はるかに少なかったことを浮き彫りにする結果になった。