2024年11月21日(木)

Washington Files

2020年8月12日

与党共和党からみて「最も手ごわい人物」

 ところが、ハリス女史がこれまで表明してきた政治的スタンスは、こうしたイメージとは程遠いものがある。

 まず、共和党陣営は、ウォーレン議員が選挙戦を通じて提唱してきた国民皆保険制度の実現について、「社会主義政策」だとして批判、国民の健康保健問題も個人の判断にある程度委ねるべきだとする保守派の幅広い支持を得てきた。莫大な資金力を誇る民間保険業界もこうした考えに賛同していた。

 しかし、ハリス女史はウォーレン女史とはこの点では立場を異にし、現行の「オバマ・ケア」が万全ではないことを認めたものの、個人での医療保険加入の道も残した上で、漸進的改革路線を打ち出している。このため、今後の選挙戦を通じ、民主党陣営はハリス女史の副大統領候補としての保険業界などからの選挙資金「集金力」にも期待を寄せている。

 さらに、トランプ陣営が今回選挙戦でも前面に押し出している「法と秩序」の面でも、ハリス女史は過去に、サンフランシスコ市検事長、カリフォルニア州司法長官としても敏腕を振るってきた。死刑執行を公認する州法成立にも異議を唱えるなど、進歩派とは程遠い現実主義者としても知られており、今後、共和党陣営としても「犯罪に手ぬるい民主党政権」を争点にしにくくなる可能性もある。

 結果的に、バイデン候補は、与党共和党からみて「最も手ごわい人物」を最終的に副大統領候補に選んだことになる。このため、全米保守層の地盤固めを最重要視してきたこれまでのトランプ再選委の基本戦略自体も、早急に修正を迫られるものとみられる。

  
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