香港映画史における最大のテーマの一つ
今回も米国に乗り込んでイップ・マンは敵=米軍軍曹を打ちのめすわけだが、イップ・マンは最初の「イップ・マン 序章」では軍国主義の日本軍人が、二作目の「イップ・マン 葉問」(2010)や三作目「イップ・マン 継承」では欧米人たちが最終対決の相手となって、そのいずれも倒して物語はエンディングを迎える。
一方、ブルース・リー映画も同様に強烈な愛国主義に基づく内容だった。「東亜の病人」と呼ばれた中国人がプライドを取り戻すところにその主眼を置いており、その路線がイップ・マンシリーズでも踏襲されている形になっている。
それは、香港がアヘン戦争に破れて英国の植民地になり、日本にも占領もされ、さらに英国の植民地に復帰するという複雑な歴史を映し出したものだ。一方、イップ・マンは、当時の大陸から逃げてきた多くの香港人と同様に、親国民党・反共産党だったとも言われている。映画興業政策上は、中国マーケットに対する配慮からそうした要素はイップ・マンシリーズのなかで巧みに排除されている。
イップ・マンとブルース・リーという二大香港カンフースターの虚実を含んだ師弟関係は香港映画史における最大のテーマの一つでもあるし、そこから香港や中国をめぐる現代史を読み解いてみるのも、一つの作品の楽しみ方になるはずだ。
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