ビジネスパーソンは、皆、似たような苦悩を抱えている
こんな人には敵わないと思ってしまうが、「追い込まれても逃げない森田さんの姿に励まされました。新しいプロジェクトを立ち上げるべく、部内全員で読んで、頑張ってみます」という手紙と共に、サインを求めて『MaaS戦記』を送ってきた読者もいたという。
「ビジネスパーソンは、皆、似たような苦悩を抱えていると思います。MaaSにかぎらず、ある日突然、辞令が出る。前例も自信もないプロジェクトに、一風変わった部下と挑まねばならない。しかし、〝Show Must Go On(何があってもショーは続けなくてはならない)〟の精神で、未知の仕事にも体当たりしていくご経験は、多くの方は身に覚えがあるのではないでしょうか」
Show Must Go Onは、森田さんが演劇時代に知った言葉だ。本書でも、ピンチのときに登場する。
「『ショーは続けなくてはならない』。そこから転じて、『人生に何が起きたとしても、毎日は続いていく。あきらめずに生きていけ』という、逆境に置かれた人を励ます言葉として使われています」
艱難辛苦の末にフェーズ2までの実証実験を成し遂げたところまでで、『Maas戦記』は終了する。この手の本でありがちな、ハッピーエンドで終わらないところ、「To be Continued」なところが本書の真骨頂でもある。
そして、今年11月からはフェーズ3に突入する。東伊豆、中伊豆エリアに加え、西伊豆、静岡市エリア、富士山静岡空港までサービスエリアを拡大するほか、交通商品数を6種類から10種類に、観光施設・観光体験の商品数も約5倍増の約110種類へ拡充する。決済時にはクレジットカードに加え、モバイルSuica、楽天ペイ(オンライン決済)での決済も可能になり、東海道・山陽新幹線のインターネット予約「エクスプレス予約」「スマートEX」との相互リンクによる連携も実施する。
森田さんは「MaaSは、儲けるための手段ではない」と話す。「むしろ、バリアをなくし、コネクティビティを高めることで、新しい付加価値を生み出すことに意味があるのです」。それは、単に人を呼び込むといったことではなく、別荘地で訪問に不便だった場所への交通をスムーズにすることで新しいワークプレイスを生み出すといったことなど、広がりは大きい。
いずれにしても、森田さんたちの取り組みはまだ始まったばかり。フェーズ3がどんな結果になったかまた報告したい。
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