オトナの教養 週末の一冊

2020年4月4日

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 海外に行って日本のことを聞かれても上手く話すことができない……。そんな経験をしたことがある人は少なくないだろう。そんなときに役立つ「会話手帳」の類(たぐい)は数多存在する。そんななかで、一瞬辞書と見まがうほどのボリュームで、一切妥協することなく作られ、版を重ねること11回、40年間読み続けられている本がある。政治・経済・社会はもちろん、最新のビジネス、技術情報、歴史、文化、習俗、食べ物、スポーツなど、内容は多岐にわたる。

 『日本-その姿と心-』(日鉄総研)がそれだ。日鉄総研と言えば、日本製鉄の子会社だが、なぜ製鉄会社が? という疑問がわく。40年前、海外出張で日本のことを英語で説明できなくて困った当事者の一人であり、10版・11版の執筆に携わった川人敦夫さんこう振り返る。

 「1970年代以降、日本の鉄鋼業がまさに最盛期のとき、世界各国の鉄鋼産業から、技術・経営指導の要請があったのです。旧新日鉄では、これに積極的に応じて社員を派遣しました。そのような中で、外国の鉄鋼マンたちと交流することが増え、日本のことを英語で上手く説明できないどころか、そもそも日本の文化や伝統を良く知らないという共通の問題があることが分かってきました。

 よし、それならば、自前で作ってやろう! となって、社内向けに日本文化、歴史などについて書いた『日英対訳』の冊子を作ったのです。それがいつの間にか、『日鉄さんは、いい本を自前で作っているそうですね。ぜひ、うちにも提供していただけませんか?』と、海外進出をした日本企業のなかで口コミが広がり、旧新日鉄から出版することになったのです。それが1982年のことです」

1973年に完成したニューヨークのワールドトレードセンタービルの鋼材は、新日鉄製の物が使用された。2001年の9.11テロで倒壊したときには、鋼材に不備があったのでは? と調べられたが、問題はなかった(grafficx/gettyimages)

 実際に手に取ってみれば分かるが、このボリューム、質を、鉄鋼会社の人が本当に作れるのか? という疑問がわく。当然、大学教授などに作ってもらったのだろうと思って聞いてみると、

 「日本文は当社で執筆、翻訳はネイティブの方、翻訳チェックはダニエル・ヘラー横浜国立大学教授にお願いして作成しています」

 なんと、本文は自前で作っているのだ。

 「日本製鉄グループには、過去、多数の優秀な先輩がおられましたので、その方々の執筆実績の積み重ねがこの本の内容に反映されています」

 さて、では、その内容の一端をご紹介しよう。

The National Flag

 The national flag of japan is called the Hi-no-Maru or the Nisshoki . Both words mean “the flag of the rising sun” The sun is represented by a red circle at the center of a white field. The design had been used on shrine flags and banners for many years before being adapted as a flag for indicating the nationality of Japanese ships in the sixteenth century.

(日本の国旗は日の丸または日章旗といわれている。両方とも昇る太陽の旗という意味である。白地の中心の赤い円は太陽を表す。昔から神社の旗やのぼりに用いられ、16世紀ごろから日本を表す旗として船に揚げられた)

 So well did the flag match the name of the country (meaning place from where the sun rises) that it was formally designated as the national flag for use on merchant ships in 1870. It became Japan’s national flag by law in 1999.

(「太陽の出る所」という意味の国号(日本)とも合致するので、1870年に商船に揚げる国旗として制定された。1999年には日章旗が国旗として法制化された)

 In its official size, the flag has a hoist of two against a fly of three and the sun is a circle whose center is at the center of the flag and whose diameter is three fifths the hoist.

(国旗としての正式な寸法は、縦横比が2対3、日章の直径は縦の長さの5分の3、日章は旗面の中央となっている)

 「なんで日本の国旗は、白地に赤丸なの?」などと、聞かれたときに、すぐに答えることができる。英語の言い回しが易しいところも、ありがたい。

 一方で、内容そのものに「へぇ~」と思わず、うならされるものもある。

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