オトナの教養 週末の一冊

2020年3月11日

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(phototechno/gettyimages)

 「ITプラットフォーマーとレガシー企業の最終戦争」――。

『2030年の第4次産業革命』

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾木蔵人さんの最新著書『2030年の第4次産業革命』(東洋経済新報社)は、冒頭から「最終戦争」という言葉が飛び出すほど熱を帯びている。前著『決定版インダストリー4.0』(同、2015年)の続編とも言える一冊だ。こちらは、版を重ね17年には中国語版も出版された。

 さて、何が「最終戦争」なのか? といえば、トヨタの豊田章男社長の言葉を引用している。「100年に一度の大変革が、自動車産業におこっている」。まさに自動車産業をはじめとて、これまでグローバル経済のなかで大きなポジションを得ていた企業、つまりレガシー(旧式)企業の立場が揺らぎつつあるというのだ。その変革の嵐の様子と、今後の展開について論じているのが本書である。

 自動車業界の変化を、尾木さんはこう語っている。

 「車で移動することが生み出す価値に対する対価(お金)を、ユーザーが誰に払うのか、その構図が変わってしまう可能性があるのです。(GAFAなど)トップIT企業は、最新鋭のAIやデジタル技術を活用して自動運転を主体的に実現することで、『自動車をつくって売る』という、これまでのビジネスモデルを変化させ、収益や既得権をオールドエコノミー側の企業からシフトさせる」

 要するに「最終戦争」というのは、新旧企業による、新しいビジネスモデル(産業)の確立に向けた戦いということである。

 こうした潮流にいち早く対応したのがドイツだ。日本と同じく、世界の冠たる自動車大国であるドイツ。その覇権を譲りたくないからこそ、「インドストリー4.0」という考え方のもと、スマート工場など、ソフト化を押し進めた。

 例えば、ドイツを代表する産業ロボットメーカーKUKA社が、2016年に中国企業に買収された。これについては技術流出を懸念する声が多くあがった。一方で、このような意見もあがったという。

「ロボットは、デジタルソフト側のソフトウェアの指示を受けて動く、精巧なマシン。例えるなら、最高級のあやつり人形であって、これを動かす頭脳にあたる部分であるデジタル・ソフトウェア技術は売られてない」

 技術流出の脅威論、一辺倒ではない背景には「製造業のサービス化」と言われる動きがある。それは「モノを販売した後のサービスで価値を生み出して、利益をあげていく」というものだ。例えば、いまの時代、ヒット商品を生み出したとしても、すぐにフォロワーが出現して、その優位性、希少性が失われる。だからこそ、製品+サービスで付加価値を出さなければ、利益があげられなくなりつつあるのだ。

 製造業の変革という意味では「マスカスタマイゼーション」にも驚かされる。本書のなかでも、スポーツ用品メーカーの独・アディダスの例が紹介されている。欧州市場では、新製品の企画、開発、そしてアジアで生産、となると1年以上の時間がかかっていた。そこに、デジタルで設計・デザインを行い、3Dプリンタも使ってシューズを生産する「スピードファクトリー」を導入した。これにより、新製品の完成が数週間で可能になったという。この「スピードファクトリー」を使えば、個々人の足のサイズにあったシューズを生産することも可能だ。

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