脇を固める名優たち、遊び心も魅力
大金をおしげもなく支払う和子(倍賞)と、島田(江口)、亜花里(上白石)、そして寺本(志尊)の4人の「天使」の登場である。それぞれが秘密を抱えていて、ドラマの進行に伴って徐々に明らかになっていくのだろう。
島田は、息子の少年野球の試合を観戦にいった帰途に、薬物の売人を見つけたところ、売人が逃げ出したのを追った。取り押さえて、持っていたバックのなかから出てきたのは拳銃だった。ふたりでもみ合ううちに暴発、父親の島田を追ってきた息子が撃たれた形となって死ぬ。
島田はなにかあると、息子が死ぬ瞬間と妻でいまは離婚している、時恵(板谷由夏)が責める場面がフラッシュバックする。
富士山を遠くに臨む、児童施設があった場所は更地になっていた。幹枝は「息子に会って謝りたい。捨てたくて捨てたのではないことを伝えたい」という。彼女は、古い1枚の新聞のベタ記事を差し出す。33年前に富士宮の地元の興信所に依頼したところ、記事にある暴力団の組長を射殺した容疑者の暴力団員が、息子だといわれたという。
島田(江口)と亜花里(上白石)は、協力して、幹枝(梶)の息子ではないかという暴力団員を探し当てた。地元の暴力団の組長になっていた。果たして、彼は本当に幹枝の息子だろうか。
この作品は、若手俳優と名優たちが絡み合って、人間ドラマを綴っていく。志尊淳は、トランスジェンダーをテーマにした「女子的生活」(NHK・2018年)や、さまざまな女性との性愛を描いた「潤一」(関西テレビ・19年)が記憶に残る。上白石萌歌は、姉の萌音とともに歌える俳優として群を抜いている。
金持ちの老婦人役の倍賞美津子はいまや、映像作品になくてはならないバイプレイヤーである。幹枝役の梶芽衣子は、米国の映画監督であるクエンティン・ジェローム・タランティーノがファンとして愛する俳優である。「キル・ビル Vol.1 Vol.2」(03年、04年)のなかで、梶の歌手としての代表作「恨み節」が使われている。
ドラマのラストは、昭和歌謡である。今回は、上白石萌歌が西田佐知子の「アカシヤの雨がやむとき」を歌っている。そんな遊び心も楽しい。
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