2024年12月6日(金)

田部康喜のTV読本

2020年2月28日

(Motortion / gettyimages)

 NHKドラマ10「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵」(毎週金曜午後10時)は、ボーカル・ドラムスで音楽ファンに知られる、クール・ビューティ、シシド・カフカが女探偵を演じるハードボイルドである。作家の若竹七海の「葉村晶シリーズ」をウルトラマンシリーズに参加した黒沢久子と、木田紀生が脚本化した。シリーズ化を期待させる、今冬ドラマの隠れた秀作である。

 「わたしは葉村晶という。国籍・日本、性別・女。吉祥寺の住宅街に店舗を構えるミステリー専門古書店のアルバイト店員にして、この本屋が副業で始めた<白熊探偵社>に所属する唯一の調査員である」――「葉村晶シリーズ」のなかで、ハムラが自己紹介するくだりである。シリーズは、1996年から刊行が開始されて、昨年末までに8冊が出ている。この女探偵をドラマで知った筆者は、そのすべてを購入して一気に読んだ。

 葉村晶をカタカナにして、「世界で最も不幸な探偵」とした題名は、小説の世界をドラマに転換する的確なキーワードだ。ハムラが引き受ける仕事は、行方不明の人の捜索だったり、女性の護衛だったり、さほど危険性はないようにみえる。しかし、ときにハムラは大けがを負ったり、死にかけたりする。

 第1回「トラブルメイカー」(1月24日)から、第4回「濃紺の悪魔」(2月14日)は、それぞれ葉村晶シリーズの短編をドラマ化しながら、ハムラの歩んできた人生と不幸な探偵ぶりを描いてきた。あつかましくカネをねだるので嫌気がさしている、姉・珠洲(ずず、MEGUMI)にまた悩まされたうえに依頼主は殺されてしまう。そして姉は自殺。その秘密を知っているという、濃紺のコートを羽織った男(野間口徹)との対決劇は、ハムラの目の前で男がビルの屋上から自殺して終わり、謎は残った。

 第5回(2月21日)から第6回(2月28日)、最終回(3月6日)までの3回「X、Y、Z」は、葉村晶シリーズの傑作・長編「悪いうさぎ」の連続ドラマである。

 ドラマは、個性的な役柄のキャスティングに成功している。小説にはなく、脚本が作り上げた警視庁の警視・管理官の岡田正太郎役に間宮祥太朗、ミステリー専門古書店の店主にして探偵社のオーナー・富山泰之役に中村梅雀。古書店に集まっては、ハムラの案件にくちばしをはさむミステリファンたちに、松尾貴史と中村靖日らが配されている。


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