田部康喜のTV読本

2020年9月25日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(DedMityay/gettyimages)

 NHK土曜ドラマ「天使にリクエスト~人生最後の願い~」は、元警視庁の暴力団担当刑事である、私立探偵・島田修悟(江口洋介)と助手の小嶋亜花里(上白石萌歌)が、終末期の老人たちの最後の願いをかなえる異色の探偵ドラマである。

 「神は最後に

  いちばんよい仕事を

  残してくださる

  それは祈りだ

     ヘルマン・ホルヴェルス神父随想より」

 ドラマの冒頭に流れる箴言が、脚本家の大森寿美男のテーマだろう。終末期に至って、人は祈る。その内容は人によってさまざまだろう。

 日本では、私立探偵モノといえばハードボイルドと重なりあったイメージがある。しかし、ドラマの主人公である、島田(江口)は感情や状況に流されないクールなタイプとはいささか違っている。

 「社長室」とかかれたドアの裏にある、乱雑な小部屋のソファに寝泊まりをしている。出勤してきた、助手の亜花里(上白石)にたたき起こされる。

島田  亜花里は、俺から離れて生きろ!

亜花里 そしたら、アル中で死んでしまうじゃない。恥ずかしくないの?

島田  恥ずかしいから、飲んでんだろ!

 亜花里は、島田が刑事時代に道を外れそうになったところを助けられた恩義があって、島田の世話をしているようだ。「修悟ちゃん」と島田を呼ぶ亜花里の言葉に温かさがにじむ。

 ハードボイルドの主人公のようなクールなイメージとは異なっているが、しゃれたセリフが楽しめる作品である。

 第1回「探偵挽歌」(9月19日)は、「天使」たちがチームであることが明らかになってくる。

 事務所にやってきた佐藤和子(倍賞美津子)は、不可思議な依頼を申し出る。入院した時に知り合った、大松幹枝(梶芽衣子)の最後の願いをかなえてやって欲しい、しかしその内容は、和子は分からないというのである。まず、ガンが全身に転移して死期が近い、幹枝を望むところに連れて行って欲しいという。

島田  それは、介護タクシーの仕事だろう。

和子  そうね、車が必要ね。

亜花里 この人、お酒が抜けたことがないので、飲酒運転になってしまうので無理ですよ。

和子  筋立てて話そうと思っているのに、ふたりがいろいろと聞くもんだから……。幹枝

さんがなにを望んでいるかを調べて欲しいの。

 和子(倍賞)は、300万円の小切手をさっとさしだす。亜花里は「これはやるっきゃないでしょ!」。

 入院している幹枝(梶)を訪ねた、島田と亜花里に彼女は、富士宮に行きたいという。「その昔、子どもを捨てたんです。もう60年になります」と答える。児童施設の玄関先に男の子を置き去りにした。

 和子が手配して、幹枝に同行させたのは、訪問看護師の寺本春紀(志尊淳)である。欧州の留学経験もある寺本は、終末期の患者の最後の願いをかなえるボランティア活動があることを知って、日本でも広げる夢を抱いている。

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