オトナの教養 週末の一冊

2020年10月16日

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地銀は数が多いことが問題なのか?

 菅首相の発言によっても注目される地方銀行の再編。今年5月に合併特例法が施行されたことで、「地域独占」へのハードルは下がった。しかし、法律ができたことによって「合併推進運動」のような形で、合併自体が目的化している。これに対して橋本さんは「合併は解決策ではない」と、警鐘を鳴らしている。

 記者もその意見を聞いて納得するところがある。例えば、「平成の大合併」で多くの自治体が合併をして合理化が図られたが、小さいながらも主体的に町づくりを行っている、合併に参画しなかった自治体のほうが、今となっては活気があるという印象を持つ。逆に、名前をなくし、広域化した自治体のほうが「自分たちの町を自分たちで守り、作り上げていく」という意識が失われてしまったのではないかと感じられることがある。これも、合併することが目的となってしまった結果なのではないだろうか。

 本書でも「銀行店舗はコストセンターだとして、合理化のため閉鎖してもよいのか?」と疑問を投げかける。「企業支援」を付加価値とするのであれば、地域の店舗は企業との重要な接点になる。さらに、「地元銀行が合併される側となった場合、県外に母体がある銀行はどこまで面倒ををみてくれるのか?」という不安も残る。

 銀行の業務を引きはがすフィンテックが台頭しているなか、必要なことは銀行自体の合併ではなく、「機能の統合」だと橋本さんは指摘する。

「現金輸送、ATM、システム、究極的には預金さえも、銀行機能で統合できるものは、どんどん統合するべきです。そのうえで、企業支援という付加価値を生む業務で、各銀行は競争するべきです」

当たり前と思っていることは、当たり前ではない

「100年前、人々は自動車のことを『馬なしの馬車』だととらえていました。そして、故障が少なくないことから馬車のほうが便利だとさえ思っていました。目の前で起きているにもかかわらず、社会経済構造さえ変えてしまっていることに、人々は思いいたらなかったのです。

 それは今でも同じことです。例えば、私の息子がYoutubeを2倍速で見ていました。なぜ? と尋ねると、『時間がもったいないから』という答えが返ってきました。情報が多すぎて、時間のほうが足りなくなっているのです。時間がより貴重になっている。私たちにとって馬車よりも自動車のほうが便利なことは常識になっているように、時間のとらえ方、使い方についても、将来は違う常識が生まれているかもしれません」

 目の前で起きていることなのに、その重要性に気づけない。記者もiPhoneが登場したときに、大手携帯キャリアの社員が「文字盤がないとメールが打ちずらい。これは流行りませんよ」と言っていたことを思い出した。今、気が付けないことが少ないからこそ、様々な知性との交流をすることによって、モノの見方を変えなければならない。

「セブン銀行がそうだったように、フィンテックの原型はもっと前からあり、グラデーションのように変化していたのです。これまでと違う目線や思考でとらえれば、ものの見え方も変わります。ヤフーが副業を解禁しましたが、面白いのは、自社を副業先にして良いとしていることです。より優秀で多様な人材が集まってくることを期待しているからです。目的は、知性を集めて新しい付加価値を生み出すことです。副業はその手段なのです」

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