この時点で、大川小学校の児童108人のうち74人が犠牲となり、4人が行方不明だった。カメラが1年間追い続けた夫婦は、小学校6年生の男子を失い、4年生の女子の遺体を捜し求めて海岸線や瓦礫のなかを探し回っている。母親は女子に対する思いを綴った色紙に手紙を書き、小学校の前に作られた慰霊の花々を置く台に、何度もたてかける。
震災の直前に携帯で撮影した、娘がピアノを弾く映像を母親はなんども眺める。娘宛の手紙を書く「お父さんとお母さんのところに戻っておいで」と。
夢でもいいから、と彼女はいう。2011年9月、行方不明者の捜索の陣容は縮小され、娘の葬儀を営む。
画面は吹雪となる。2012年の年が明けて、母親は初めて娘の夢をみる。「思いが通じた」と、彼女はつぶやく。
NHKスペシャル「映像記録」の結語で締めくくりたい。
「あの日を忘れてはならない。映像が語りかけています」
(敬称略)
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