2022年8月13日(土)

WEDGE REPORT

2020年11月11日

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何 清漣 (か・せいれん)

経済学者・ジャーナリスト

1956年中国湖南省生まれ。湖南師範大学卒。上海復旦大学で経済学修士号を取得、中国社会科学院の特約研究員などを務める。政治経済学の観点から共産党統治の構造的病弊と腐敗を指摘し、国家安全当局による圧力を受け2001年に米国へ渡る。著書に『中国現代化の落とし穴』(草思社)、『中国の嘘』『中国の闇』(ともに扶桑社)など。

 インドはその最たる例だ。インドは新型コロナの流行と闘うために、AIIBから合計12億5000万ドルの2件の借款を得たが、それ以前のインフラプロジェクトへの借款を加えると、41億ドル以上にのぼる。AIIBにおける中国の引受済み資本金額は約298億ドルであり、全体の30%を占める。AIIBにおいて中国は最大の出資国で、インドは最大の借り手だが、両国間では相変わらず国境紛争が続く。巨額の借款は両国の緊張関係を緩和しなかったのである。

(出所)AIIB資料を基にウェッジ作成、青字は域外加盟国 写真を拡大

 AIIBでは人材不足も懸念されており、職員数はADBの1割程度にとどまる。こうした人数で相手国の実情を踏まえた審査ができるのかなどの指摘もある。また中国が議決権の26%を握っている(右図)。重要な議案採択には75%以上の採択が必要だが、中国だけが拒否権を持つ状況だ。

 表面的に見ればこの議決権は、出資配分における中国の絶対的な優位性によるものだが、実際には、資金が主に中国からのものであるという事実による。中国は舞台を設置し、その舞台で歌うように呼びかけている。シェア設定に関しては中国は資本を割り当てなければならず、他の国のシェアは中国よりはるかに小さい。

 しかし、あまり公表されていない別の「ルール」がある。ほとんどの国が「名義」貸しをして、さまざまな比率の株式資本を引き受けているが、実際には、引受価額よりもはるかに低い水準の引受価額で合意している。AIIBが現金を使い果たした場合にのみ、会員は割り当て済みの株式資本を支払う必要がある。たとえば、香港は7651株を引き受ける必要があり、そのうち1530株は資本金で支払われ、残りの12億ドルは5年間で支払われる。

13種の通貨でローン提供
背景にドル不足と人民元国際化

 中国がまとめたレポートによると、AIIBは13種類の通貨でローンを提供する能力を備えているという。AIIBは19年5月、ロンドンで25億ドルの5年物のグローバル債券を発行した。20年6月には初めて、30億元のパンダ債(オフショア人民元建て債券)を発行した。

 このような政策銀行の成否を測る重要な指標は、借款の限度額だ。AIIBは期待していた融資目標を達成できず、債券を発行して資金を調達しなければならなかった。AIIBは25年までの年間融資額を100億ドルと述べているが、開業4年で承認された融資額は計200億ドル。この水準に留まっているということは資金が不足していることを表している。これは、近年の中国国内の経済の衰退、そして、米中関係の悪化と直接関係している。

 米中貿易戦争後、両国の関係は緊迫している。米国による制裁措置は徐々に強化されている。世界の国々は中国の市場と投資に大きく依存しているが、中国の経済的繁栄は米国への三重の依存、つまり技術、金融システム、貿易黒字への依存によるものだ。

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