2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2020年11月8日

犯罪者が入国してしまうことも?

 履歴書のでっち上げは、これまで筆者が取材してきた留学生にも何件もあった。東京都内の日本語学校に通っていたあるベトナム人留学生は、兵役に就いていた過去を履歴書には載せず、その間の1年半は専門学校に在籍していたことにしていた。ベトナムで兵役に就くのは、貧しく、学力のない若者とのイメージがある。そのことを案じた留学斡旋業者が、履歴書を改ざんして日本語学校へ提出していた。

 こうした証明書類の改ざんは、日本ではまず起こらない。でたらめな履歴書をつくっても、企業や学校に確認すればすぐにバレてしまう。だが、ベトナムでは賄賂さえ払えば“本物”が簡単に手に入り、後で問題になることもない。

 履歴書までも簡単に書き換えられてしまうのであれば、ベトナムで犯罪を犯した人間が、過去を隠して日本へ入国することだってできるかもしれない。そんなデタラメがまかり通るのも、政府が外国人の底辺労働者を確保するため、実習生や留学生の「数」を増やしてきたからなのだ。そのツケが今、「犯罪」となって現れ始めている。

 多額の借金を背負っての来日、また捏造書類を使ってのビザ取得にしろ、他のアジア新興国出身者の多くに共通する。ただし、ベトナム人の場合は、在留者数が断トツに多い。実習生では全体の半数以上に当たる約21万人、留学生も約8万人が受け入れられている。

 犯罪に走るのはごく一部だとはいえ、家畜の盗難などに絡んでベトナム人の逮捕が相次いだ結果、「ベトナム人」のイメージは大きく傷ついた。最も迷惑し、また心を痛めているのは、真面目に暮らす在日ベトナム人たちだろう。

「留学生や実習生の受け入れ制度は絶対におかしいです。早急に見直さないと、犯罪だってどんどん増えていく」

 筆者の周囲のベトナム人からは、口々にそんな声が聞かれる。

 ベトナム人らを実習生や留学生として受け入れる際には、絶対に借金を背負わせてはならない。そしてビザ申請時には、書類の審査を厳格に実施すべきである。その2点だけでも実行に移されれば、ベトナム人犯罪は大幅に減っていく。それは日本人のみならず、ベトナム人たちにとっても好ましいことなのだ。

  
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