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2020年11月5日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

有罪、しかし無罪

 話は飛ぶが1999年 不倫・偽証疑惑で当時のビル・クリントン大統領(民主党)が弾劾裁判にかけられた。上院で無罪の評決を受け解職を免れたが、当時、民主党の長老、ロバート・バード元上院院内総務(故人)の語った言葉が忘れられない。

 バード氏は「大統領が偽証をしたのは事実だと思う。しかし米国民の団結のために弾劾にはあえて反対する」ー。

 多民族、多様な社会を維持するためには、たとえ有罪であっても政治色の強い弾劾は避けるという苦渋がにじんでいた。きびしいことをいうようだが、あくまで正義を追及するのなら、あえて有罪を宣告すべきではなかったか。

 当時ワシントン勤務で、この裁判を取材した筆者は、これ以来、アメリカの社会も表看板とは裏腹に、「本音と建て前」ではないかとの疑念を抱き続けてきた。今回の大統領選挙はあながち、そうした見方が誤りではなかったことを示したと自負してる。

 トランプ大統領は開票大詰めの段階にきて自らの形勢が不利になってくると、開票の続行中止を求める訴訟を起こした。

 いったん投票箱に入った〝清き一票〟の封印などあり得まい。

 法廷がどう判断するかだが、もし訴えを認めたなら、それこそ民主主義の精神に反するというべきだろう。

 開票中、ホワイトハウス周辺で抗議活動をしていた極右団体のメンバー3人が刺された。表現の自由は米国が本家ではなかったのか。これまでなら考えられなかった事件だろう。

超大国・米国の「終わりの始まり」

 CNNの報道など、メディだけでなく、米国内で懸念は高まりをみせつつある。

 「トランプ政権は、〝アメリカ・ファースト〟、〝ミー・ファースト〟、人種差別の政権だ。ブラジルの(ボルソナロ)政権など、コピーのような政権の登場も許してしまった。米国の衰退の始まりだ」(米テンプル大、ジーン・ウィルコックス教授)という自嘲気味の指摘もある。

 トランプ政権が1期だけで終わるのか、2期目も継続するのか、現段階では確定をみていないが、トランプ政権は米国が唯一の超大国の座を失う契機になったとして、後世に記憶されることになるかもしれない。

  
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