2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月17日

 こうしたプロセスが進むにつれ、ガソリン精製業者が次々と倒れていくだろうから、ガソリンは自ずと高くなる。それがクルマのエタノール化をさらに促進するはずだ。こうしてガソリンが市場から排斥される結果、上記2007年法の予定達成年度2022年を過ぎた辺り、2023年頃に、米国はエネルギーにおける自給自足を達成するだろう、と論じています。

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石油のアナリストとしては、我が国では、ダニエル・ヤーギンの方が名が通っており、ヴェルレガーは無名に近いですが、IIE(ピーターソン国際経済研究所)のフレッド・バーグステンは、ヴェルレガーを「全米で最も信頼のおける石油アナリスト」と評しています。

 この論文でヴェルレガーが描くシナリオには、確かに、いくつかの隘路、すなわち、トウモロコシにおける燃料用・食糧飼料用の需給関係、自動車会社の対応力、シェールガス産出が自然保護勢力の抵抗にあって順調に進むか、といった問題があります。そうだとしても、書き手ヴェルレガーが、石油市場を40年見てきたベテランだという要素を加味しようが、または捨象しようが、ひとつの大いにありそうな未来を提示してみせた事実に変わりありません。日本の自動車会社にとっても、賭けるに値するシナリオであると言えるでしょう。

 ヴェルレガーが描いたシナリオが実現した暁には、米国は産出に必要な投入要素が著しく安価になる結果、コスト競争力で一躍優位に躍り出るとの見立ては、確かにバラ色の予測ではあります。しかしそれだけ人を鼓舞する訴求力に富んでもいます。そして、米国衰退論への強烈なアンチテーゼでもあります。

 なお、この米国復活シナリオが現実のものとなったとき、日本は米国から買うガスが多額に及び、対米貿易赤字を恒常化させることとなっている可能性があります。

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