世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年11月19日

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 来年9月のドイツ総選挙まで、すでに1年を切っているが、メルケル首相の出身政党である最有力政党CDU(キリスト教民主同盟)がいまだに首相候補を決められずにいる。直接的には新型コロナの影響で、4月に予定されていた同党の党首選が年末に延期されたものの、新型コロナの再燃により、さらに再延期が決まったためである。

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 メルケルは2018年10月に、同年12月の党首選には出馬しない意向を表明し、首相職も2021年の任期限りで引退する意向を表明した。そもそも前回2017年秋の選挙結果がはかばかしくないもので、FDP(自由民主党)、緑の党との三党連立交渉が破綻し、あわや再選挙かと思われたが、やっと2018年3月になって社民党(SPD)との大連立が成立した。しかし、その後も地方選挙で負けが続き、特に外国人・難民問題で与党内の意見対立が収拾せず、極右AfD(ドイツのための選択肢)の台頭を許した。

 この責任を取ってメルケルは2018年末にまず党首職を返上した。ザールラント州首相から中央政治に移動したばかりのアンネグレート・クランプ=カレンバウアー(頭文字を取ってAKKと呼ばれる)が、2018年12月の党大会でフリードリヒ・メルツ議員を僅差で破って党首となった。しかし、その後もCDUの人気は回復せず、AKKは2020年2月に党首職の辞意を表明し、次期首相候補となることを諦める旨を表明した。本来、この4月に党大会が開かれ、AKKの党首としての後継者が選ばれる予定であった。さらにバイエルンにおける姉妹党のCSU(キリスト教社会同盟)との首相候補者選定が行われる必要があるのだが、コロナのために先延ばしになっていた。4月から年末まで延期したものの、コロナ患者数が再び増加し始めたため、再度の延期となった。

 この間、4月のロックダウン直後には、危機対応が評価され、メルケルの人気が高まり、CDUの支持率も40%に迫る勢いであった。しかし、その後支持率はやや下がり、現在は35%前後となっている。SPDの方は、オーラフ・ショルツ財務相を首相候補とすることを今年8月にすでに決めている。緑の党は、その前にオンラインで党大会を実現している。CDUの立ち遅れは否めない。

 ノルトライン=ヴェストファーレン州のアルミン・ラシェット州首相や、保守派が支持するフリードリヒ・メルツなどの名が挙がっているが、決め手に欠ける。

 気になるのはメルケルの動きで、今のところ100%再選を否定しているが、来年度に入っても後継者の目途が立たず、コロナも一向に落ち着かないようであれば、次第にメルケル続投論が党内で強まる可能性はある。なんといっても国民の支持は根深いし、長期政権故の存在感も抜群である。だだ、安易にメルケルに頼ってしまうと、国民感情に鈍感になってしまう恐れがある。国民はメルケルの危機対応を評価しつつも、やはり15年を超える長期政権には飽き飽きしている。

 心配なのは、やはり来年の総選挙の結果である。国内最強の政党がこの状況である。さらに、年明けにはおそらくイギリスが合意なきEU離脱に踏み切る。経済も混乱するであろう。当初こそメルケルの訴えに一致団結したものの、次第に支持が離れ、選挙の結果、多数形成が非常に困難な多党乱立状況が生まれる可能性もある。そのようなことにならないためには、CDUはもう一度求心力を取り戻す必要がある。

  
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