2024年12月9日(月)

From LA

2020年11月17日

 感謝祭(11月最終木曜日)は米国ではクリスマスや新年よりも重要な行事だ。遠く離れている家族もこの日だけは共に過ごし、七面鳥を食べる。毎年この時期は国内の移動が最高に達し、航空機料金も高くなれば前後の高速道路は渋滞する。

 しかしコロナの中で迎える初の感謝祭はこれまでとは全く異なるものとなりそうだ。米国では今年2月以降の集計で感染者は1000万人以上、死者も感謝祭までに25万人に達する見込みとなっている。特に11月3日には1日の感染者数が過去最多の18万7907人を記録するなど、全く収束の気配が見えない。

(Rowr/gettyimages)

 ニューヨーク州のようにすでに一部の商業活動制限や小規模のロックダウンを開始した州もあるし、特に感染の広がりが目立つ中西部ではこれまでなかったマスク着用義務を州政府が呼びかけるなど、各地で対策が行われている。

 カリフォルニア州も14日、「感謝祭で州外へ移動することは避けるように」という勧告を出した。もしどうしても移動する必要がある場合、その土地での14日間の自己隔離を呼びかけている。これは米国内でも感染者数が2番目に多い(最多はテキサス州)同州から感染を他州へ拡大しないため、また感染者数が増加傾向にある他州から感染をさらに呼び込まない、という姿勢だ。

 また感謝祭当日も「集まる人数は6人以下、家族を中心にする」という勧告も出されている。3月に全米初のロックダウンが行われた際にもイースターなどの祭日に家族以外の人を呼ばない、会食などは少人数で、という呼びかけがあった。しかし感謝祭となると話は別だ。

 多くの人々にとって久しぶりに会う家族とのひとときはかけがえのないものだ。家族の中でホストを決めて毎年回り持ちするところもあり、兄弟、親戚、友人が一同につのって七面鳥を中心とした料理を楽しむ、というのが米国の伝統なのである。

 それを強制ではないが6人までに制限、となると米国人の不満は募る。人の集合はとにかく避けるように、と言われているが、最大の許容は葬式であり、30人まで認める、となっている。そこでSNSなどでは「私のペットである七面鳥は確実に11月26日に死亡するので、自宅で七面鳥の葬儀を行う。30人まで参加可能」といった書き込みが見られるようになった。

エアライン、飼育農家にも打撃
ブラックフライデーは?

 感謝祭を制限することで経済に与えられる打撃も深刻だ。まず航空機などの需要減はただでさえ厳しい経営状態を強いられている航空会社、旅行会社にさらなるダメージを与える。ケータリングなどを行うレストラン業界も同様だ。そして少人数での集まり、ということで七面鳥の需要そのものが落ち込み、飼育農家は在庫に苦しむことになるかもしれない。

 そして感謝祭開けにはブラックフライデーが待っている。感謝祭翌日の金曜日は小売業界にとって最大の書き入れ時になっている。毎年一部小売店には開店前から長蛇の列が出来るのが恒例だ。

 今年に関してはオンラインでのブラックフライデーセールに切り替えたところも多いが、米国人にとっては店に並び、目当ての商品を手に入れることがひとつのイベントでもあり、これがなくなることを残念がる声もある。


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