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2020年11月22日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

テロ黒幕を陛下に会見許す

 もっと驚くのは2018年に起きたサウジのジャーナリスト暗殺事件への対応だ。

 ジャマル・カショギ氏は米国に滞在して、母国サウジ政府に対する批判的な筆鋒をふるっていたが、2018年10月、結婚の手続きのために訪れたトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で消息を絶った。

 トルコ当局などの捜査で、カショギ氏は館内で、サウジ本国から派遣された〝暗殺団〟によって生きたまま切断されたなどという恐るべき事実が明らかになった。サウジのムハンマド皇太子が〝黒幕〟と噂され、米英仏など各国は関与した情報機関員ら、それぞれ10数人に対して資産凍結など経済制裁を科した。

 日本はと言えば、現首相の菅官房長官が「トルコにおいて捜査中なのでコメントは差し控えたい。早期の真相解明、公正で透明性のある解決を期待したい」と述べただけで、制裁などまったく触れずじまい。

 「われ関せず」というべきか、被害者への同情、犯行への怒りなど、人間味がほとんど感じられないコメントだった。「報道の自由、人道的見地から事態の推移を注視していく」と述べたのがほんのわずかの救いだった。

 ムハンマド皇太子は2019年6月、大阪で開かれたG20(20カ国・地域)首脳会議の際に来日。日本政府は、皇太子と天皇陛下の会見を許し、安倍首相(当時)も会談した。首相との会談はまだしも、陛下を訪問させる国賓なみの処遇というのだから、その無神経さには驚く。

強硬と宥和のバランスを

 対中関係に話を戻せば、日本としては、中国が隣国、最大の貿易相手国だ。良好、悪化した状態にかかわらず、関係の維持は必要であり、米国や欧州とは置かれた状況が異なるのは理解せねばなるまい。コロナ禍の昨今、自動車や繊維などの輸出が比較的順調であることを考えれば、なおさらだ。

 しかし、わが国は、中国が国家安全法導入を決めた2020年6月、秋葉剛男外務次官が中国の孔鉉佑駐日大使を外務省に呼びつけ、強い懸念を表明した事実もある。

 対中強硬姿勢と宥和のバランスをとることは簡単なことではないが、毅然とした姿勢を忘れてはなるまい。

  
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