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2020年11月22日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

18日、逮捕された民主派の前の立法会議員3人(AP/AFLO)

 香港立法会における民主派議員の資格はく奪をめぐって中国と欧米の応酬が激しさを増している。

 米英など「ファイブ・アイズ」5カ国の外相が強く非難する声明を発表、中国は罵倒に近い表現で反発した。制裁が発動される可能性もあり、対立は拡大する気配だ。

 気になるのは、共同声明に日本の名がみえないことだ。中国の脅威と間近で対峙している日本が消極的な態度に終始すれば各国に〝弱腰〟と映る恐れがある。 

 中国に対してだけではない。対露政策などにおいてもそうだが、日本外交での「人権」は各国と比べると、ほとんど重きに欠けるようだ。

各国は制裁も辞さない構え

 中国全国人民代表大会(全人代)の決定を受けて、香港政府が立法会の民主派議員4人の資格を〝失効〟させ、これに抗議した他の議員11人が辞任を表明した経緯は、すでに繰り返し報じられているので重複は避ける。

 「ファイブ・アイズ」を構成する米英、カナダ、豪州、ニュージーランド5カ国外相が11月18日に発表した共同声明は、6月の国家安全法、9月の立法会選挙の1年延期につづいて、香港の自治と権利、自由をさらに損なうものと指摘。1998年の中英共同宣言の違反として「強い懸念」を表明し、「国際社会の主要メンバーとして中国が自らの義務を遂行し香港市民に対する責任を果たすよう期待する」と強調。あわせて4人の剥奪取り消しを強く要求している。

 中国外務省の趙立堅報道官は19日、あくまで中国の内政問題であり、他の国が口を出すべきではないと述べ、「(5カ国は)気をつけないと目玉をひきぬかれるだろう」と強く反発した。下卑た表現の意味はよく理解できないが、恫喝であることは間違いない。

 香港返還時の中英共同宣言違反であることを重視する旧宗主国の英国は制裁を科す構えで、米国なども同様の措置をとる可能性がある。

 各国はすでに、国家安全法が制定された後、中国への貿易優遇措置を見直すなどの制裁を科している。

控えめ、あいまいな日本の態度

 今回、日本の対応をみると、加藤官房長官が「重大な懸念を強め状況を注視している。香港が民主的、安定的に発展していくことが重要だ。中国側にもさまざまな機会を通じて伝達している。関係国と連携し適切に対応したい」と述べたが、5カ国外相の共同声明に比べるといかにも控えめだ。具体的にどう「適切に対応」するのかも、あいまいだ。

 「関係国と連携」というなら、環太平洋の主要国が名を連ねている共同声明に加わるべきはないのか。声明とりまとめにあたって日本側に参加の打診があったのか、なかったのか、あっても日本側が拒否したのかーなどは詳らかではないが、ここはむしろ、押しかけていくか、日本が主導して、中国に圧力を加えるべきだろう。

 1989年の天安門事件で各国から制裁を科された後、中国の故銭其琛元外相が、最も姿勢の弱かった日本に働きかけ、天皇訪中(1992=平成4年)を実現させて包囲網を突破したーと回想していることをよもや忘れてはなるまい。

毒盛り事件にも当事者意識欠く

 対中国に限らず、こと「人権」となれば、日本外交の反応はすべて敏感さを欠くというべきだろう。

 対ロシアがいい例だ。

 ロシアの野党指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が同国情報機関の手で、神経剤「ノビチョク」を盛られ重体に陥った事件は記憶に新しい。英国、EU(欧州連合)などは犯行にかかわった政府高官を含む個人、団体に対し資産凍結、入国禁止など措置をとった。

 日本では加藤官房長官が「化学兵器の使用は非人道的行為で決して許されない。早期に事実関係が解明されることを期待したい」と極めて簡単に政府の見解を説明しただけ。欧米各国とは対照的だった。

 9月のG7外相会議声明がロシアに犯人の処罰を強く求めた際、日本の茂木敏充外相もくわわっていたのだから、こういうコメントは当事者意識にまったく欠けているといわれてもやむをえまい。

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