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2020年11月10日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 ジョー・バイデン(民主党)氏の米次期大統領就任が確実になったことによって、次の焦点は新政権の陣容がどうなるかに移った。

 バイデン氏は勝利宣言で、深まったアメリカ社会の亀裂修復を最優先に掲げており、政権の顔ぶれについても、性別、人種にこだわらない幅広い人選を行うと予想される。

 国務、国防、財務長官など重要閣僚にいずれも女性が就き、共和党内からも閣僚が起用されるのではないかと取りざたされている。

(REUTERS/AFLO)

初の女性国防長官登場か

 バイデン氏はすでに政権移行に向けたウェブサイトを開設、準備を一層加速させる構えだ。11月26日の感謝祭前後からそれぞれのポストの指名が公表されるとの報道もなされている。

 同氏はこれまで、就任式が行われる来年1月20日その日から「全力をあげて難問に取り組む」と述べ、「史上もっとも多様性にとんだ政権を作り上げる」との方針を明らかにしている。

 注目される人事は、閣僚では、国務、国防、財務、司法などの各長官、ホワイトハウスのスタッフは、大統領首席補佐官、国家安全保障担当補佐官など。

 女性が初めて就任する可能性が強いといわれているのは国防長官。オバマ政権で国防次官をつとめたミシェル・フロノイ氏が有力視されている。

 クリントン政権で次官補代理として活躍、2016年の大統領選で、ヒラリー・クリントン元国務長官が当選していれば、長官就任が有力だったといわれる。

 次官時代、沖縄・普天間飛行場の名護市辺野古移転を強く推進したことで日本国内でも知られ、この問題の行方にも影響を与えるとみられるている。

 アフガニスタンからの撤退を含む米軍の展開計画を自らが中心となって立案。今年夏、外交専門誌に、中国人民解放軍の能力向上に対抗するために米軍の装備強化が必要と指摘する論文を寄稿して話題を呼んだ。

 国防長官候補としてはこのほか、ウェスト・ポイント(陸軍士官学校)出身で上院軍事委員会筆頭メンバーのジャック・リード議員(民主)、イラクに従軍した経験のある女性のタミー・ダックワース上院議員(民主)らの名も取りざたされている。

国務長官はライス氏有力

 全世界関心の的である国務長官候補として最有力とみられているのは、オバマ政権の大統領補佐官(国家安全保障問題担当)だったスーザン・ライス氏。

 英オクスフォード大学で学び、早くからホワイトハウスなどで活躍、クリントン政権でアフリカ担当の国務次官補、オバマ政権1期目は国連大使、2期目で補佐官に転じた。民主党内の外交、安全保障問題の第一人者で安定感は抜群、待望論は強い。

 しかし、難点も少なくない。  

 9・11同時テロが起きる数年前、同事件の首謀者、ウサマ・ビンラーディンが本拠地にしていたスーダンから米国に身柄を移すという話が持ち上がった時、国家安全保障会議スタッフとしてスーダンと交渉に当たったライス氏がこれを拒否、9・11の遠因につながってしまったという批判がある。

 2012年にリビアのアメリカ領事館が襲撃された事件では、「計画的なテロ事件ではなかった」などと主張。議会の反発を買ってオバマ政権2期目、ヒラリー・クリントン国務長官の後任になる予定だったはずが実現せず、議会承認の必要がない大統領補佐官に転じた経緯がある。

 対中関係では、米中の「新しい大国関係」という習近平主席の構想に好意的といわれ、中国が2013年、尖閣を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定した際の対応が鈍かったなど、〝親中〟ではないかと指摘する向きもある。

 バイデン氏の選挙チームのトップ、アントニー・ブリンケン元国務副長官、バイデン氏の盟友、クリス・クーンズ上院議員(民主)らの名も挙がっているが、興味深いのは共和党のミット・ロムニー上院議員が取りざたされていることだ。

 ロムニー氏はマサチューセッツ州知事時代の2012年、オバマ大統領、バイデン副大統領が再選された選挙の対立候補だった。

 バイデン氏とはいわば敵対関係にあるが、両氏は個人的に親しく、次期大統領はロムニー氏の集会に招かれて「高潔な人」と持ち上げたことがある。

 ロムニー氏を起用すれば、いわば〝連立政権〟の色彩を帯び、民主、共和両党の和解への一助になるともみられている。

 しかし、ロムニー氏は、2020年2月、トランプ大統領がウクライナ疑惑で弾劾裁判にかけられたときに共和党でただ一人造反、賛成票を投じた。上院でこれまで通り共和党が多数を占めれば、承認が難航するとみられる。

 反対党からの閣僚起用は稀ではなく、クリントン政権のコーエン国防長官ら、無所属ながら、ブッシュ(子)政権で国防長官を務めたロバート・ゲーツ氏はオバマ政権でも留任した。

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